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性同一性障害「女装」理由の解雇は不当と司法判断
「性」変更 職場の理解徐々に
(朝日新聞2002/06/23朝刊・家庭面)
uploaded 2002/06/23
(ハイパーリンクは引用者)
「性同一性障害」と診断された横浜市在住の男性(36)が、「女装」などを理由に会社から懲戒解雇されたことについて、東京地裁は20日、「解雇は不当」との判断を示した。国内で治療行為としての性別適合(性転換)手術が行われるようになって3年半。今春には女性競艇選手が男性に登録を改めるなど、自らの望む性で働きたいと願う人が増えつつある。職場の受け入れは進んでいるのか。周囲はどう受け止めているのか。
人権問題としての認識も
「この構文は絶対に覚えておくこと。入試で出題されます」
真剣なまなざしの浪人生を前に、英語講師(45)が声のトーンを上げて注意を促す。
大手予備校「河合塾」(本部・名古屋市)の池袋校。千人以上の生徒を指導するこの講師は86年、男性として採用された。2年前、予備校側に「性同一性障害」であることを伝え、今は女性として働く。セミロングの茶髪に薄化粧をし、デニム地のロングスカートをはく。90分間、ハイヒールで黒板の前を行き来しながら、余談も挟まず授業を進める。
自分の性に対する違和感を取り除こうと決めたのが96年。埼玉医大の倫理委員会が性別適合手術を正当な医療と認めた報道を機に「残りの人生を女として生きたいと思った」。
次第に女性化する講師に、「どうしたの」と不審に思う職員や「変な格好をやめさせて」と不快を訴える講師はいたが、生徒からの苦情はなかったという。
99年暮れ。この講師は埼玉医大で受診し、診断書を提出、通称変更や女性トイレの使用を求めた。
その場で了承したという高橋正則・東日本地区本部教育部長は「まさか身内にと戸惑ったが、生徒指導面での悪影響がないのだから構わないと考えた。長く悩んできたと知り、理解した」と話す。
東京都内の一部上場企業に勤める30代の社員も採用時は男性だったが、途中から女性として働いている。数年前の異動を機に「女性として頑張りたい」と人事部に申し出た。
提出した資料は、性同一性障害の医学的文献や理解を深めるために自助グループで使う勉強会用テキスト、米国の企業向け対応マニュアルなど。1週間後には、通称使用や女子トイレの使用などが認められた。「人権問題としてとらえてくれたんだと思う」
職場環境や就職活動で苦悩する人も多い。
埼玉県のパート社員(37)は一級建築士の資格を生かして専門学校で教えていたが、数年前、経営者の意向で退職に追い込まれた。「男のくせに女の格好をするのは許せない」という理由だった。
労働基準監督署や会社の労働組合に相談したが「前例がない」と取り合ってもらえなかった。その後、女性として面接を受けた別の会社に再就職が決まったが、働く前に戸籍は男性であることを明らかにすると、話は白紙に戻った。以来、事務職のパートを転々としている。
「『正社員にならないか』と誘われても戸籍の性を知られるのが怖い」
現在の年収は100万円に満たない。同居する母親の年金と合わせ、なんとか暮らせている状態だ。
なお根強い抵抗や不快感
女装などを理由とする懲戒解雇は不当とした20日の東京地裁の決定は、性同一性障害の人の雇用に関する国内初の司法判断だった。元社員の女性は幼稚園のころから違和感を覚え、会社側に女子トイレの使用などを訴えていたが受け入れられなかったという。
職場の抵抗は強いのが実情だ。
性同一性障害の人たちの自助グループ「TSとTGを支える人々の会」が00年1、2月に会員に行った調査によると、男性ではなく女性として働きたいと思う78人のうち、実現できている人は19%にあたる15人。女性ではなく男性として働きたいと思う58人のうち、実現できている人は36%の21人だった。
同会の事務局によると、望む性ヘ変わろうとする際、職場の同僚から奇異の目で見られたり不快感を訴えられたりすることは多い。しかし人権意識の高まりから、申し出た人への対応策を考える企業が出てきている、という。
神戸学院大法学部の大島俊之教授(民法)は「ヨーロッパでは性を理由とする解雇は違法。日本でも女装が解雇の理由にならないと示されたことは、不当な扱いに泣き寝入りしそうな当事者の支えになるだろう」と話す。
| 性同一性障害 体と心の性が一致しない症状。日本精神神経学会は、この障害を持つ人は1万人から10万人に1人の割合でいる、とみている。98年10月、国内で初の公式な性別適合手術が実施された。これまで埼玉医大と岡山大医学部などの医療機関を訪れた人は千人を超えたという。そのうち十数人が国内で手術を終えている。学会は今年3月、治療と診断のガイドラインを4年ぶりに改訂した。より実情に沿ったものにするためで、ホルモン療法や乳房切除の開始年齢を2歳引き下げて、18歳から可能とした。 |
(写真)教材を抱え、控室で次の授業の準備をする英語講師=東京・池袋で
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ご参考判例 (EU裁判所がTSの解雇を無効としたもの)
The P vs S & Cornwall County
Council, 1996/04/30
P対Sおよびコーンウォール・カウンティ・カウンシル事件