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戸籍上明らかに錯誤ないし法律上許されない戸籍記載がされている場合、それが重大な身分事項に関する記載であっても、戸籍法116条によらずに、直ちに同113条に従って戸籍の訂正をすることができるとされた事例
佐賀家庭裁判所審判平成11(1999)年1月7日
〔平9(家)1003号、戸籍訂正許可申立事件―許可・確定〕家庭裁判月報51巻6号71頁
判例タイムズ1036号(2000年9月25日)平成11(1999)年度主要民事判例解説・民法73〔親族K〕事件
uploaded 2001/03/12 (西暦は引用者)
【判旨】
フィリピン人とフィリピン国の方式により婚姻した日本人男につき婚姻の届出がされた後、フィリピン人が男であることが判明し、同性婚は、日本法によれば婚姻意思を欠く無効なものであり、フィリピン家族法によれば婚姻の合意を欠き無効となると解され、錯誤がある又は法律上許されない戸籍記載がされたことが明らかであるところ、右のような戸籍記載がなされている場合、それが重大な身分事項に関するものであっても、その真実の身分関係につき当事者間において明白で争いがなく、これを裏付ける客観的な証拠があるときは、真実の身分関係について確定裁判を経るまでもなく、直ちに戸籍法113条に従い戸籍の訂正をすることができる。
【参照条文】
民法742条
婚姻は、左の場合に限り、無効とする。
一 人違その他の事由によつて当事者間に婚姻をする意思がないとき。
二 当事者が婚姻の届出をしないとき。但し、その届出が第七百三十九条第二項に掲げる条件を欠くだけであるときは、婚姻は、これがために、その効力を妨げられることがない。
法例13条1項
婚姻成立ノ要件ハ各当事者ニ付キ其本国法ニ依リテ之ヲ定ム
戸籍法113条
戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、利害関係人は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる。
家事審判法9条2項
家庭裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に家庭裁判所の権限に属させた事項についても、審判を行う権限を有する。
【解説】
《事案の概要》 日本人男性Xは、平成7(1995)年ころ、フィリピン人Yと知り合って交際するようになり、双方ともに婚姻の意思を有するに至り、平成8(1996)年1月8日、フィリピン国内でYの両親立会の下、同国の方式により婚姻し、同月12日、本邦のA町役場に対して婚姻の報告的届出を行った結果、X本籍地において、YとXが婚姻した旨を記載した新戸籍が編成された。
しかしながら、平成9(1997)年4月中旬ころ、XがYと共に、Yの入国査証の更新のため本邦のB入国管理局に赴いた際、Xは、同局職員から、Yが偽造旅券を使用して本邦に入国したこと、同人の真正な旅券によれば同人は男性となっていることを告げられた。実際に、真正旅券においては、Yは男性で、氏名及び生年月日もXの戸籍の記載とは異なっていた。そして、Y本人も、B入国管理局における事情聴取の際に、自ら、自分は女性ではなく男性であることを認めた。そして、Yは、Xによる本件戸籍訂正の申立前である同年8月末ころ、B入国管理局職員に身柄を拘束され、間もなくフィリピンに強制送還された。
一方、A町役場はXに対して、平成9(1997)年6月6日付で、Yとの婚姻届出が不法である旨の戸籍法24条1項による通知を行い、同年9月17日、Xは本籍地を管轄するC家庭裁判所に対して本件戸籍訂正の申立を行った。
《問題の所在》
重大な身分事項に関して、明らかに錯誤ないし法律上許されない戸籍記載がされている場合、戸籍訂正の方法は、戸籍法116条によるべきか、同法113条によっても許されるか。
参照条文―引用者
戸籍法第24条
戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、市町村長は、遅滞なく届出人又は届出事件の本人にその旨を通知しなければならない。但し、その錯誤又は遺漏が市町村長の過誤によるものであるときは、この限りでない。
前項の通知をすることができないとき、又は通知をしても戸籍訂正の申請をする者がないときは、市町村長は、管轄法務局又は地方法務局の長の許可を得て、戸籍の訂正をすることができる。前項ただし書の場合も、同様である。
裁判所その他の官庁、検察官又は吏員がその職務上戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを知つたときは、遅滞なく届出事件の本人の本籍地の市町村長にその旨を通知しなければならない。
戸籍法第116条
確定判決によつて戸籍の訂正をすべきときは、訴を提起した者は、判決が確定した日から一箇月以内に、判決の謄本を添附して、戸籍の訂正を申請しなければならない。検察官が訴を提起した場合には、判決が確定した後に、遅滞なく戸籍の訂正を請求しなければならない。