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戸籍
性別の不一致を理由とする戸籍訂正に関する裁判例
(前注)
「事案の概要」中、@は本人の年齢・性別、Aは変更を希望する名の使用期間・使用状況等、Bは性同一性障害等の診断の有無・内容、Cはその他の事実関係をいう。審判又は決定において認定されていない項目については記載していない。
参考資料:東海林保「いわゆる性同一性障害と名の変更事件、戸籍訂正事件について」家庭裁判月報52巻7号1頁(2000年7月)ほか
last edited 2003/09/15
| 番号 | 裁判所 裁判年月日 事件名 出典 |
申立の趣旨 | 決定内容 | 事案の概要 | 理由要旨 | 備考 |
| 1 | 福井家庭裁判所審判 昭和33(1958)年8月21日 戸籍訂正許可 田中加藤男「先例戸籍訂正法」183頁 |
女→男 | 許可 | C幼少より女として育てられてきたが、生来半陰陽の肉体的素養を有しており、青年期に至り次第に男性的徴候が顕著となってきたので、女としての生活様式を改め、男として再出発することを決意し、6回にわたり外科的手術を行った結果、肉体的にも男性としての条件を具備するに至った。 | ||
| 2 | 東京家庭裁判所審判 昭和38(1963)年5月27日 戸籍訂正許可申立事件 司法研究報告書16輯3号256頁 田中加藤男「先例戸籍訂正法」184頁 |
父母との続柄欄 長女→長男 |
許可 | @男性 B男性仮性半陰陽 |
||
| 3 | 名古屋家庭裁判所審判 昭和54(1979)年9月27日 戸籍訂正許可申立事件 家庭裁判月報33巻9号63頁 |
父母との続柄欄 二男→長女 |
申立却下 | @20代男性 Bいわゆる半陰陽であると主張。 C性転換術や豊胸術によって外見上女性形を示している。 |
鑑定結果によれば、事件本人は、染色体検査、骨盤エックス線検査、診断所見によっても本来正常な男性であって、造膣術等の性転換術や豊胸術によって外見上女性型を示しているに過ぎない。よって、事件本人は依然男と認めるほかなく、本件申立は前提を欠くことになる。 | 【4】の原審 |
| 4 | 名古屋高等裁判所決定 昭和54(1979)年11月8日 戸籍訂正許可申立却下審判に対する即時抗告申立事件 家庭裁判月報33巻9号61頁 |
父母との続柄欄 二男→長女 |
抗告棄却 | 【3】と同じ | 人間の性別は、性染色体の如何によって決定されるべきものであるところ、鑑定書によれば、事件本人の性染色体は正常男性型であるというのであるから、同人を女と認める余地は全くない。 | 【3】の抗告審 |
| 5 | 東京家庭裁判所審判 昭和55(1980)年10月28日 戸籍訂正許可申立事件 |
父母との続柄欄 長男→長女 |
許可 | @40代男性 C米国の大学病院において、セックス・チェンジの手術を受け、男性から女性に変わった。 |
同大学院の医学博士の証明書によると、事案の概要記載の事実は真実と認められる。 | |
| 6 | 札幌家庭裁判所小樽支部審判 平成元(1989)年3月30日 戸籍訂正許可申立事件 家庭裁判月報43巻8号62頁 |
父母との続柄欄 二男→長女 |
申立却下 | @幼児男性 B男性仮性半陰陽 C出生時に外性器の形態が異常で、男女の性別の判定が困難であったが、性染色体検査の結果から男性との判定を受けた。その後の検査で、申立人は外性器の形態からは男女いずれとも判定しがたい外性器異常であること、内性器の両側性腺は精巣で、明らかな子宮、膣は認められないが、会陰部には膣前庭、膣遺残があり、尿道は女児としての長さを有すること、申立人の生命を維持するためには、女性型の外性器を形成した上、女性として養育することが必要不可欠であると診断された。 |
戸籍訂正は、戸籍の記載が当初から不適法又は真実に反する場合等についてなされるものであるところ、申立人については、その性染色体、生殖腺、内性器の形態等からみて、そもそも男子として出生したものであることが明らかであり、さらに、申立人は、現在、性染色体はもとより、その他においても女性として何らかの身体的特徴を備えているわけではないことが認められる。そうであれば、申立人について、戸籍上の性別を男から女に訂正すべき余地はないものといわざるを得ない。 | 【7】の原審 |
6a |
浦和家庭裁判所川越支部審判 平成元(1989)年5月25日 戸籍訂正許可申立事件 戸籍時報平成2(1990)年3月号64頁 |
父母との続柄欄 長男→長女 |
申立却下 | @男性 C昭和54(1979)年ころから女装を始め,昭和62(1987)年10月シンガポールの病院において,男性から女性への性転換手術を受け,日常の生活は女で通しているが,就職,通院など性別が必要になる場合など社会生活上著しい支障がある。 |
人間の性別は,最終的には性染色体の如何によって決定されるべきものであるところ,Xは,夫として昭和45(1970)年に結婚し,性生活も有し,妻を妊娠させて二人の子供を儲けたこと,昭和54(1979)年ころから本格的に女装し,女性ホルモンを注射するようになり,その結果,胸が大きく女性らしくなり,男性機能が低下し,性格も女性らしくなっていったこと,昭和62(1987)年10月にシンガポールで性転換手術を受けた結果,男性性器を除去し,外見上は女性性器の形状をしていること,そして,女風呂に入浴しても,全く怪しまれることはなかったことなどの事情にかんがみると,Xはもともと医学的には男性であり,性転換手術及び女性ホルモンの注射によって外見上女性に見られるように至ったことは明らかである。そうだとすると,本件については,性染色体の如何について鑑定の結果を待つまでもなく,Xが,もともと男性であり,戸籍上も父母との続柄欄は「長男」であることは明らかである。 Xについて,外見上女性であり,社会生活の上でも女性として生活していること,戸籍上男性であると社会生活の上で支障があることは認められるが,戸籍における性別は,身分関係を確定かつ公証する上で極めて重要な公的機能を有し,仮にも本件申立を認容すれば,例えば,XとXの子供との関係が重大な混乱を来すことになることなど上記機能を失わせる結果になることは明らかである。Xの支障は,戸籍制度の上で救済するには限界があるというべきである。 |
|
| 7 | 札幌高等裁判所決定 平成3(1991)年3月13日 戸籍訂正許可申立却下審判に対する即時抗告申立事件 家庭裁判月報43巻8号48頁 |
父母との続柄欄 二男→長女 |
原審判取消 訂正許可 |
【6】と同じ | 間性の性別をなにを基準として決定するかについては、研究が進展するに伴い、性染色体のいかんは唯一、絶対の基準ではないとされるようになり、現在の医療の実践においては、外性器異常を伴う新生児が出生した場合、異常の原因、内性器、外性器の状態、性染色体の構成等のほか、外性器の外科的修復の可能性、将来の性的機能の予測を慎重に勘案し、将来においてどちらの性別を選択した方が当該新生児にとってより幸福かという予測も加味した上で性別を決定するという扱いが定着するようになってきているが、こうした医療の実践が社会通念、国民感情に照らして容認しがたいほど不相当であると断ずることはできない。 抗告人の性染色体は男性型のXYであるけれども、抗告人が尿道海綿体を欠如しているため、外性器を男性型に形成することは極めて困難であること、それにもかかわらず抗告人を男性として養育した場合、抗告人が外性器の形態の異常及び機能障害を有することによって受けるハンディキャップ、劣等感は甚大なものであること、抗告人の生命にもかかわりかねない重篤な排尿障害の治療としては、抗告人の現在の女児の長さを有する尿道を維持することが必要であることの事情から、担当医は抗告人を男性ではなく、女性と判断したものであって、右医療上の判断が不相当であるということはできない。 以上説示したところによると、申立人は女性であると認められる。 |
【6】の抗告審 |
| 8 | 横浜家庭裁判所審判 平成6(1994)年3月31日 戸籍訂正許可申立事件 |
父母との続柄欄 二女→二男 |
申立却下 | @40代女性 B性転換症に該当する C20歳の頃から外観上男性のような生活を始め、今ではごく少数の者を除き申立人が実は女性であると知っているものはいない。普通の女性と結婚式を挙げて同棲し、性的行為において男性的役割を果たし、安定した家庭生活を行っている。20歳の頃には乳房の切除手術を受けている。健康保険証の提示等で苦痛を感じている。 |
戸籍は真実が記載されることを強く要請するものであって、戸籍訂正の制度自体、この目的に沿ったものである。他方、戸籍制度も人が人々の社会生活の利便の増進のために設けた制度なのであるから、その目的に適うならば、ある程度弾力的に運用してもよいとの考え方はありうる。この観点から熟慮はしたが、人の性別を本来のものから異性に変更するという重大な事柄は、戸籍が維持を目的とする身分秩序に真っ向から対立し、その壁はあまりにも大きく、本件において申立人の性別「女」を錯誤と評価して、父母との続柄欄を「二男」と訂正することを相当とすべき根拠は見出せない。 | 【11】の原審 |
| 9 | 東京家庭裁判所審判 平成7(1995)年9月27日 戸籍訂正許可申立事件 |
父母との続柄欄 長男→長女 |
申立却下 | @30代男性 B仮性半陰陽であった旨主張(そのことを認定する証拠はないとされている) Cかねてから女装や化粧に興味を持ち、20歳頃から女性として生活するようになった。平成6(1994)年にタイで性転換手術を受けたが、手術に際しては、事前にカウンセリング等の医学上の慎重な検査はなかった。 |
申立人は、仮性半陰陽であった旨主張するが、申立人が仮性半陰陽であることを認めるに足りる証拠はない。むしろ、以上認定した事実によれば、申立人は、男子として出生し、長期間男性として行動してきたことが明らかであり、また、本来正常な男性であるため、日本において性転換手術がかなわなかったので、タイ王国において性転換手術を受けて外見上女性型を示しているにすぎないと認められる。そうすると、申立人について、戸籍の性別の記載が当初から不適法又は真実に反する場合とはいえず、戸籍上の性別を男から女に訂正すべき余地はない。 | 【10】の原審 |
| 10 | 東京高等裁判所決定 平成7(1995)年11月10日 戸籍訂正許可申立却下審判に対する即時抗告申立事件 |
父母との続柄欄 長男→長女 |
抗告棄却 | 【9】と同じ B性同一性障害と認められている旨主張(性転向症的な性向を強めるようになったと認定) |
申立人は、性染色体の構成上も生殖器等の形態上も正常な男子として出生したものであるが、その後、次第に性転向症的な傾向を強めるようになって、平成6(1994)年に性転換手術を受けるに至ったに過ぎないものであることが明らかである。そして、男女の性別の判断は、専ら性染色体の構成や生来の内性器、外性器の状態などの生物学的ないし解剖学的な基準によって決せられるべきものと解すべきであるから、事後の手術によって性の転換をみたとして戸籍訂正が許容される余地はなく、申立人については戸籍法113条所定の戸籍訂正の事由が存在しないものといわなければならない。 | 【9】の抗告審 なお、その後、特別抗告が申し立てられたが、旧民事訴訟法419条の2所定の場合にあたらないとして、不適法却下されている。 |
| 11 | 東京高等裁判所決定 平成9(1997)年3月28日 戸籍訂正許可申立却下審判に対する即時抗告申立事件 |
父母との続柄欄 二女→二男 |
抗告棄却 | 【8】と同じ C(【8】の審判後の事実) 平成8(1996)年には子宮腺筋症の治療のため腹式子宮全摘術、両側附属器切除術を受けた。 |
申立人が社会的、法的に女性として扱われることに耐えられず精神的に深く苦悩していることはもっともなことであり、証拠資料によれば、人の法的性所属の確定に当たり、生物学的性とともに社会的、精神的性も併せ考慮すべきであるとの考え方がいわゆる先進諸国において強まってきていることが窺われるけれども、我が国においては、生物学的、生理学的な性と異なる性を戸籍に記載することを容認する社会的環境にはまだないといわざるを得ない。 | 【8】の抗告審 なお、その後、特別抗告が申し立てられたが、旧民事訴訟法419条の2所定の場合にあたらないとして、不適法却下されている。 |
| 12 | 浦和家庭裁判所越谷支部審判 平成9(1997)年7月22日 戸籍訂正許可申立事件 |
父母との続柄欄 長男→三女 |
許可 | @男性 B性染色体がXY型を示すが、内生殖器も外生殖器も未発達で、精巣の睾丸陰嚢の存在が認められず、膣もない。血清中のホルモンの値は女性の正常値を示す。個体としては女性型へ進行したと考えられ、脳の性状や精神活動も女性型と矛盾しない。 C大学3年生頃からスカートをはくなど女性として生活してきた。 |
申立人は、性染色体が男性型のXYであるものの、性分化の過程で異常を生じ、現在表現形式としての男性生殖器を有せず、男性仮性半陰陽にあたるものであり、ホルモン分泌としては女性としての正常値に位置し、その結果中枢神経系の機能や精神活動にも影響を及ぼし個体としては女性型へ進行しているといえる。 そうであれば、申立人は女性であるというべきであり、その戸籍の続柄欄が長男と表示されていることは誤りというべきである。 |
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| 13 | 名古屋家庭裁判所審判 平成10(1998)年7月22日 戸籍訂正許可申立事件 |
父母との続柄欄 長男→長女 |
申立却下 | @40代男性 C結婚して二子をもうけたことで男性としての役目を果たしたので今後は女性としていきたいと考え、昭和58(1983)年に性転換手術及び豊胸手術を受け、以後継続的にホルモン剤の投与を受けている。職場では男性として、私生活では女性として生活している。 |
申立人は、妻との間に二人の子をもうけているのであるから、生物学的に男性として生まれ、男性としての生殖機能を持っていたことが明らかである。申立人は性転換手術及び豊胸手術を受けたことにより、外形的には女性の性的特徴を有するようになったものであり、また、精神的にも女性としての意識を持っているものであるが、上記手術によって生物学的に女性になったものとまでは認めることはできず、依然として男性であるといわざるを得ない。 | |
| 14 | 新潟家庭裁判所審判 平成11(1999)年1月25日 戸籍訂正許可申立事件 |
父母との続柄欄 長男→長女 |
許可 | @30代男性 B男性仮性半陰陽、性染色体はXY型 C出生時における外性器の形状により長男として出生届がされ、13才くらいまでは男性として生活してきたが、その後、第二次性徴として乳房のふくらみが現れるなどし、それ以後はホルモン療法を受けながら、女性としての生活を送っている。 |
性別の決定については、@立位での排尿及び男性的性生活の可能性を有する長さの陰茎が存在するか否か、A排尿及び性生活を可能とするのに必要な整形手術の難易度、B精巣分化・テストステロン作用の障害程度、C子宮・膣の存否のほか、さらに、「脳の性差」「心理的男・女」を無視することはできないとして、Dその心理的傾向がいずれの性に近いか、をも加えて総合的に吟味すべきである。 | |
| 15 | 水戸家庭裁判所土浦支部審判 平成11(1999)年7月22日 戸籍訂正許可申立事件 家庭裁判月報51巻12号40頁 |
父母との続柄欄 長女→長男 |
許可 | @20代女性 B男性半陰陽、性染色体はXY型 C申立人は出生当時、精巣が外に出ておらず、外性器に異常があった。両親が医師と相談した結果、申立人を女性として育てた方がよいということになり、「長女」として出生届がなされた。生後11か月時の診断で男性半陰陽と分かった。そして、3歳時に左側睾丸の除睾術と外唇形成手術が実施された。右側の睾丸は残されているが、発育が悪い。申立人の性別自認は一貫して男性であり、現在は、成年に達している。 |
申立人の性染色体は46XYであり、診断書による病名は男性半陰陽であり、本来の性は男性であること、睾丸の働きが遅れたため出生時外陰部異常がみられ3歳時に左側の除睾術と外陰形成を施されたが、思春期に右側の除睾術は施されておらず、申立人の性別自認は一貫して男性であり、男性か女性かについての揺らぎは今後はみられることはなく、妊孕性はないものの性器の手術等により男性としての性行動が可能であることが認められる。そうすると、申立人が女性であることを前提とする戸籍の記載は真実に反するものというべきである。 | |
| 16 | 東京家庭裁判所八王子支部審判 平成11(1999)年8月9日 戸籍訂正許可申立事件 高等裁判所民事判例集53巻1号79頁判例時報1718号62頁 |
父母との続柄欄 長男→二女 |
申立却下 | @男性 C(Aは国名である)申立人は、染色体の構成や生殖器の構造等生物学的には正常な男性として出生したが、自己の性別への違和感に悩み、25歳の時にAで性転換手術を行っていることを知ってそのころから何回にもわたって渡Aし、精神療法やホルモン療法を受けた上、平成×年×日(××歳時)にAで性転換手術を受けた性同一性障害者であり、外性器は性転換手術により女性形となっており、現在外見的には女性として生活していることが認められる。 |
申立人は、染色体の構成や生殖器の構造等肉体的には正常な男性として出生したが、自己の性別への違和感等から、平成×年にいわゆる性転換手術を受けたものであることが認められる。 そうすると、申立人の戸籍の性別の記載が当初から不適法又は真実に反する場合であったとはいえず、 戸籍法113条所定の戸籍訂正の事由は存在しない。 |
【17】の原審 |
| 17 | 東京高等裁判所決定 平成12(2000)年2月9日 戸籍訂正許可申立却下審判に対する即時抗告申立事件 高等裁判所民事判例集53巻1号79頁判例時報1718号62頁 |
父母との続柄欄 長男→二女 |
抗告棄却 | 【16】と同じ C(【16】に付加する事実) もっとも、本件記録によると、抗告人(申立人)について……乙山医師は、物心がついた時から性別違和感を感じる完全なプライマリーの性同一性障害ではないと診断しているが、抗告人がいつ頃から、どれほど深刻に悩んでいたかについては、幼少時から抗告人の成育状況や生活態度等を知っているはずの抗告人の母親や姉妹について調査が行われていないこともあって、明らかでない上、抗告人が性転換手術を受けたAでの治療経過が必ずしも明らかではなく、 日本精神神経学会の ……ガイドラインに沿った診断、治療が行われたかどうかについても、それを確認できる資料がない。 |
現行の法制においては、男女の性別は遺伝的に規定される生物学的性によって決定されるという建前を採っており、戸籍法とその下における取扱いも、その前提の下に成り立っているものというほかないから、生物学的にみて完全な男(又は女)として出生し、その旨の届出がされて、戸籍に男(又は女)として記載された者が、性同一性障害と診断され、医師の関与の下にいわゆる性転換手術を受けて、外形的にみる限り別の性(女又は男)の内・外性器の形状を備えるに至ったとしても、性別に関する戸籍の記載が、
戸籍法113条にいう「法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があること」に当たるということはできないといわざるを得ないのであって、抗告人の本件申立ては理由がないというほかない。 なお、付言するに、性同一性障害に苦しみ、いわゆる性転換手術を受けてまでも生来の生物学的性とは別の性の下で生きることを真剣に望む者が相当数いることは否定できない事実であり、医学界においても、 その治療及び診断のガイドラインを作成、公表するなどの動きのあることは、…認定のとおりである。しかし、いわゆる性転換手術については、それが性同一性障害の治療方法として社会一般の承認を得るに至っているかといえば、現段階ではこれを肯定することを躊躇せざるを得ず、社会的なコンセンサスを得るためにはなお十分な議論を要する実情にあるといわざるを得ないし、性別の変更を肯定するとしても、単に戸籍法の分野のみならず、関連する法令の適用上種々の重大な問題を惹起し、社会生活全般に極めて大きい影響を及ぼすことが予想されるのであって、その解決のためには、幅広い視点に立って問題点を洗い出し、社会生活に及ぼす影響の程度や将来の社会のあり方等についても慎重な検討が加えられる必要があり、戸籍訂正の可否やその手続に関しても、これらの作業の一環として解決が図られるべきものというべきであって、結局のところ、立法に委ねられるべきものと考えられる。 |
【16】の抗告審 なお、その後、特別抗告が申し立てられたが、民事訴訟法336条所定の場合にあたらないとして、不適法却下されている。 |
| 18 | 関東地方A家庭裁判所決定 平成14(2002)年8月 戸籍訂正許可申立事件 (各紙報道による) |
父母との続柄欄 ○女→○男 (同左) |
申立却下 (同左) |
埼玉医大で倫理委の承認を得るなどの正式な手続きで性別適合(性転換)手術を受け、2001年5月、同様の手術をした5人とともに戸籍訂正を申し立てた。男性として生活しているが、就職や通院が困難な上、結婚もできず、憲法で保障された幸福追求権を妨げられている。(同左) | 性同一性障害について社会的認識が広まりつつあるが、訂正の法的根拠がない。性同一性障害の原因は医学的にまだ不明確。出生時の性別判断に戸籍法上、訂正が可能な「錯誤」に当たるとは認められない。(同左) |
東京高裁へ即時抗告 (同左) |
| 19 | 東京家庭裁判所 平成14(2002)年12月 戸籍訂正許可申立事件 (各紙報道による) |
父母との続柄欄 ○女→○男 (同左) |
申立却下 (同左) |
埼玉医大で女性から男性への性別適合手術(性転換手術)を受けた三十代の当事者。この当事者を含む六人は昨年、「手術で体が変わっても、戸籍が変わらなければ、結婚も就職もできない」と、関東や東北各地の家裁に一斉に性別訂正を申し立てていた。(同左) | 性別の生物学的側面のみに基づき「出生時は外性器のみならず染色体についても女性であったことが明らか」と指摘。戸籍法上、訂正の理由となる「錯誤」があったとはいえないと判断。 (当事者側が主張した性別の精神的、社会的側面などには言及せず。)(同左) | 東京高裁へ即時抗告 (同左) |
| 20 | 東京家庭裁判所 平成15(2003)年1月 戸籍訂正許可申立事件 (各紙報道による) |
父母との続柄欄 ○女→○男 (同左) |
申立却下 (同左) |
埼玉医大で女性から男性への性別適合手術(性転換手術)を受けた40代の当事者。戸籍が元のままだと結婚や就職に支障があることから、この当事者を含む6人が2001年、関東や東北地方の家裁に一斉に戸籍訂正を申し立てていた。(同左) | 戸籍法上、訂正の理由となる「錯誤」について「戸籍の記載が当初より真実に合致しない場合」と限定的に解釈した上で、この当事者は「出生時は(外性器など)生物学的に女性」であり、錯誤に該当しないと判断。(同左) |
東京高裁へ即時抗告 (同左) |
| 21 | 最高裁判所第二小法廷 平成15(2003)年5月 特別抗告 |
不明 | 特別抗告棄却 | 不明 | 民事事件について特別抗告をすることが許されるのは,民訴法336条1項所定の場合に限られるところ,本件抗告理由は,違憲をいうが,その実質は原決定の単なる法令違反を主張するものであって,同項に規定する事由に該当しない。 | 確定 |
| N1 | 那覇家庭裁判所 平成16(2004)年7月28日 |
許可 | GID特例法初の適用事例とみられるケース |
参考条文 →法令へ
戸籍法第113条
戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、利害関係人は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる。
旧民事訴訟法第419条ノ2
不服ヲ申立ツルコトヲ得サル決定及命令ニ対シテハ其ノ裁判ニ憲法ノ解釈ノ誤アルコト其ノ他憲法ノ違背アルコトヲ理由トスルトキニ限リ最高裁判所ニ特ニ抗告ヲ為スコトヲ得
前項ノ抗告ノ提起期間ハ五日トス
前項ノ期間ハ之ヲ不変期間トス
(新)民事訴訟法第336条(特別抗告)
地方裁判所及び簡易裁判所の決定及び命令で不服を申し立てることができないもの並びに高等裁判所の決定及び命令に対しては、その裁判に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
2 前項の抗告は、裁判の告知を受けた日から五日の不変期間内にしなければならない。
3 第一項の抗告及びこれに関する訴訟手続には、その性質に反しない限り、第三百二十七条第一項の上告及びその上告審の訴訟手続に関する規定並びに第三百三十四条第二項の規定を準用する。