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教育基本法改正問題

last edited 2003/03/23


日本国憲法第26条

すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。


教育基本法

学校教育法

「児童の権利に関する条約」(子どもの権利条約)
Convention on the Rights of the Child
Adopted and opened for signature, ratification and accession by General Assembly resolution 44/25 of 20 November 1989


新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について(答申)(中央教育審議会 2003/03/20)

中央教育審議会「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について(中間報告)」に対する意見募集について

新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について(中央教育審議会中間報告)


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News & Articles


共同 2003/03/21

中教審答申、教育基本法改正へ

〈中教審答申、教育基本法改正へ〉

中央教育審議会(鳥居泰彦会長)は二十日、教育基本法を全面改正し、愛国心や公共心の涵養(かんよう)を盛り込むとする答申をまとめ、遠山敦子文部科学相に提出した。昨年十一月の中間報告で先送りした宗教教育では「宗教的情操の涵養」が焦点となったが、条文化提言は見送った。

現行法は、戦前の国家至上主義的な教育の反省に立ち「個人の尊厳」や「真理と平和の希求」を掲げ「教育の憲法」とされてきたが、一九四七年の制定以来、初めて改正に向かって動き出す。
文部科学省は改正法案作りに着手、開会中の通常国会への提出を目指す。
しかし教育の基本理念の転換には教育現場を中心に強い抵抗感がある。また与党内でも自民党が改正に意欲的なのに対し公明党は慎重姿勢。与党三党は五月の連休明けにも協議機関を設置し、調整を図る方針だ。
答申提出後、鳥居会長は「二十一世紀の教育が目指す基本的方向を示したと確信する」とコメント。遠山文科相も「これまでで最も重い答申だ」と述べた。
答申は現在の日本の閉塞(へいそく)感や、いじめ、不登校などの教育問題を挙げ基本法改正の必要性を強調した。
基本法に盛り込む新たな理念として@社会に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養A日本の伝統文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養B男女共同参画社会への寄与―など八項目を挙げた。
宗教教育では「宗教への寛容」などを定めた現行法に「宗教に関する知識の尊重」を追加。「宗教的情操」には異論が強く、条文化は求めなかった。
ほかの項目は大筋で中間報告のまま。教育の基本目標を「二十一世紀を切り拓(ひら)く心豊かでたくましい日本人の育成」とし、具体的には「新しい公共」を創造する日本人の育成などを掲げた。
五年間の「教育振興基本計画」を策定する根拠規定のほか、家庭の役割、学校・家庭・地域の連携の重要性も規定するよう提言した。
基本法の改正は二〇〇一年十一月に遠山文科相が諮問した。

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=教育基本法(抄)=

(前文)われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。
われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。
ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。
第一条(教育の目的)教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
第五条(男女共学)男女は、互に敬重し、協力し合わなければならないものであつて、教育上男女の共学は、認められなければならない。
第六条(学校教育)法律に定める学校は、公の性質をもつものであつて、国又は地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。
A法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。
第九条(宗教教育)宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。
A国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
第一〇条(教育行政)教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。(用字用語は原文のまま)

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〈国家と個性どう折り合う〉

《解説》

教育基本法の改正を提言した中教審答申は随所で「日本人の育成」を強調し、教育改革の重要な理念として位置付けた。しかし子どもたちに「日本人としての自覚」を求めることが、教育を取り巻く問題の解決にどう結び付くのか、納得させるだけの説明はない。
答申は冒頭、国民に広がる自信喪失や閉塞感を指摘。同時に、深刻化する教育課題も列挙した。
中教審委員の平均年齢は六十代半ば。高度成長期からバブル経済の時期を担い、日本を経済大国に押し上げてきた世代だけに、日本の現状への失望感は強い。「世界をリードする人間を育成しないと、ほかの国に負ける」(鳥居会長)、「改正はインパクトがある」(木村孟副会長)。言葉の端々に、教育改革をてこにした日本復活への期待がにじむ。
しかし、現代の消費社会を生き、物質的に恵まれた子どもたちに「日本のため」「新しい公共の担い手に」と呼び掛ける声は届きにくいだろう。
答申は一方で、一人ひとりの個性を伸ばすことの重要性も強調した。国家や公共など集団への貢献を求めることと、個性を発揮するように育てることとはどう折り合いを付けるのか。
「日本人」という概念も今では単純ではない。人種や国籍が違う子どもたちが学ぶ教室も珍しくなくなった。こうした教室で「日本」や「日本人」だけを教えるわけにはいかない。答申は「真の国際化」という課題にも答えを示さなかったといえる。

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〈学校関係者の懸念拡大〉

教育基本法の改正で「愛国心」が明記されることになった。既に公立学校では日の丸掲揚や君が代斉唱がほぼ全校で実施されている。「国を愛する心」を評価する通知表も一部で導入され、学校関係者の間では「教育行政が心の中に土足で踏み込む行為が正当化される」と懸念が広がっている。
福岡市では昨年から、市立小学校のほぼ半数の六十九校で、六年生社会科の四評価項目の一つとして「国を愛する心情」「日本人としての自覚」を三段階で評価、通知表に記載する。
市民団体の削除要求に対し、通知表のモデルをつくった校長会は「学習指導要領に沿っており問題はない」。この問題が伝わった後、愛知県の教育関係者から同市に「よくやってくれた。うちもやりたい」との電話があったという。
市内の四十代の男性教員は「そもそも評価なんて不可能で、ばかげている。だが愛国心が法律で規定されたら、同様の通知表が全国的に広がるかも」と不安を見せる。
この通知表を使っている小学校に二人の子どもが通学する李博盛弁護士は「ますます在日コリアンが住みにくくなる」とため息をついた。
文部科学省は昨年から道徳用副教材「心のノート」を全国の小中学生全員に配った。同省は「積極的に現場で活用してほしい」とPRに懸命だが「まるで国定教科書のよう。国家が心の内面に入ってくる」と警戒する向きもある。
「皆さんの良心に従って判断してください」。昨年の卒業式で、君が代斉唱に反対してこう呼び掛け、戒告処分を受けた大阪府立高校教諭、中野五海さん(53)。「これまでの日の丸・君が代の強制は法的根拠が問題視されていたが、基本法に明記すれば強制正当化の根拠になる」と話した。

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=識者談話=

〈あまりにお粗末〉

▽小森陽一東大教授(日本近代文学) 教育の憲法とも言われる教育基本法を改正するというのに、中教審の審議は事務局側の作文を追認するだけであまりにもお粗末だった。その結果、偏見と独善に満ちた特定のイデオロギー色が濃い答申になった。「たくましい日本人の育成」との国家目標の下に個人の教育権を奪い、能力主義と競争主義に基づいた強者の論理と弱者切り捨てを押しつけるものだ。とりわけ「日本の伝統・文化の尊重」という偏狭なナショナリズムによって、子どもの心や家庭の中に国家が土足で踏み込もうとすることは許せない。

〈道徳向上へ前進〉

▽林道義東京女子大教授(深層心理学) 伝統・文化の尊重、愛国心や「公共」への意識を育てることを答申に盛り込んだのは前進だ。特に道徳心や規範意識などは厳しく教える必要がある。家庭教育の重要性に言及したことも評価できるが、一方で家庭について「最小限の範囲で(条文に)規定する」としていることには矛盾がある。また「父親のかかわりが十分でない」とだけ指摘しているのは疑問だ。母親が適切にかかわっていないことも大きな問題だと思う。


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=中教審答申の要旨=

中教審が二十日提出した答申要旨は次の通り。
【第1章 教育の課題と今後の教育の基本的方向】
1、教育の現状と課題
わが国の教育は危機的な状況に直面している。いじめ、不登校などの深刻な問題があり学ぶ意欲が低下、「確かな学力」の育成が重要になっている。現行の教育基本法に定める普遍的理念は大切にしつつ、今後重視すべき理念を明確化することが必要。
2、21世紀の教育が目指すもの
教育の普遍的な使命と新しい時代の大きな変化の潮流を踏まえ「21世紀を切り拓(ひら)く心豊かでたくましい日本人の育成」を目指す。
3、目標実現のための課題
基本法をはじめ教育関連法制の見直しまでさかのぼった改革が必要。各分野の施策を総合的に位置付ける教育振興基本計画を策定、実効性のある改革を進めていく必要がある。
【第2章 新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方】
1、教育基本法改正の必要性と改正の視点
制定から半世紀以上を経て教育全般に問題が生じている。根本にさかのぼった改革が必要。現行法の「個人の尊厳」、「平和的な国家及び社会の形成者」などの理念は、普遍的なものとして今後も大切にしていくとともに、以下の教育理念や原則を明確にするため基本法の改正が必要。
@信頼される学校教育の確立
A「知」の世紀をリードする大学改革の推進
B家庭の教育力の回復、学校・家庭・地域社会の連携・協力の推進
C「公共」に主体的に参画する意識や態度の涵養(かんよう)
D日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養
E生涯学習社会の実現
F教育振興基本計画の策定
2、具体的な改正の方向
(1)前文及び教育の基本理念
(前文)
教育基本法は、憲法に基づく新しい教育理念を明らかにし、教育関係諸法令制定の根拠となる重要な法律。基本法の位置付けは今後とも維持し、引き続き前文を置く。
前文に定める基本的な考え方については引き続き規定する。
(教育の基本理念)
現行法の基本理念は普遍的なもので引き続き規定する。
(新たに規定する理念)
特に強調すべき理念として、以下の事項を基本法に規定する。
個人の自己実現と個性・能力、創造性の涵養
感性、自然や環境とのかかわりの重視
社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養
日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養
生涯学習の理念
時代や社会の変化への対応
職業生活との関連の明確化
男女共同参画社会への寄与(現行法の男女共学の趣旨は広く浸透したので削除)
(2)教育の機会均等、義務教育
@教育の機会均等
引き続き同様に規定する。
A義務教育
期間を9年間とし、国公立学校における授業料を無償とすることは、引き続き規定する。
(3)国・地方公共団体の責務
教育は不当な支配に服してはならないとの原則は引き続き規定。教育における国と地方公共団体の責務を規定する。
(4)学校・家庭・地域社会の役割等
@学校
学校には公共性が求められ、設置者には運営の安定性や継続性を担保する能力が求められることを引き続き規定する。
A教員
研究と修養に励んで資質向上を図ることの必要性を規定する。
B家庭教育
家庭が子どもの教育に第一義的責任を負うことに留意、家庭の役割を責任を最小限の範囲で新たに規定する。
C社会教育(略)
D学校・家庭・地域社会の連携・協力(略)
(5)教育上の重要な事項
@国家・社会の主体的な形成者としての教養(略)
A宗教に関する教育
宗教に関する寛容の態度や、宗教の持つ意義を尊重することが重要である旨を適切に規定する。
人格形成の上で宗教的情操は大変重要。
(6)その他留意事項
就学年齢について個人差に応じた弾力的な制度や、小学校6年間の課程の分割、幼小・小中・中高など各学校種間の多様な連結などを検討、実現可能なものは法改正などで対応する。
3、教育基本法改正と教育改革の推進
改正の趣旨が生かされるよう学習指導要領など教育全般にわたって見直しを行うことが必要。
【第3章 教育振興基本計画の在り方について】
1、教育振興基本計画策定の必要性
現行法には基本計画に関する規定がなく、教育に関する政府全体の基本計画は策定されてこなかった。政府は基本法に根拠を置いた基本計画を策定する必要がある。
2、教育振興基本計画の基本的考え方
(1)計画期間と対象範囲
おおむね5年間とすることが適当。計画の対象範囲は原則として教育に関する事項とし、密接に関連する学術やスポーツ、文化芸術教育等の事項もこの計画に含める。
(2)教育の目標と教育改革の基本的方向
(これからの教育の目標)(略)(教育改革の基本的方向)
@信頼される学校教育の確立
A大学改革の推進
B家庭の教育力の回復
C生涯学習社会の実現
(3)政策目標の設定及び施策の総合化・体系化と重点化(略)
(4)計画の策定、推進に際しての必要事項
教育投資の充実
国と地方公共団体、官民の適切な役割分担
政策評価の実施
〈具体的な政策目標等の例〉
(略)


共同 2003/03/21

問われる教育分権 中教審答申、自治体の責務規定

 中央教育審議会(鳥居泰彦会長)が二十日、教育基本法の全面改正に向け遠山敦子文部科学相に提出した答申は、改正法に「地方公共団体(自治体)の責務」を盛り込むよう求めた。現行法に教育行政の分権を規定する記述はなかった。

 さまざまな議論を経た新理念「公共」は、「社会に積極的に貢献する『公共心』や『公共的な空間』のイメージ」だという。教職員には、NPO(民間非営利団体)やボランティア活動など「公共」を支える実社会の動きに一層の理解が欠かせず、教育の地方分権の真価が問われることになりそうだ。

 地方の責務については、義務教育費の税源移譲が議論されているとあってか「国と地方公共団体の適切な役割分担を踏まえ」とあいまいな記述。鳥居会長は「既に行われている役割分担をラジカル(根本的、急進的)に変えるべきか、中教審で決めるわけにはいかない」と説明した。

 具体的な分担の在り方については今後、策定される「教育振興基本計画」にゆだねられた。


静岡新聞 2003/03/21

財政負担転嫁を懸念 中教審答申、県内教育界

 中教審が二十日に提出した教育基本法改正に関する答申で、地方分権の観点から「適切な役割分担を踏まえた、教育における国と地方公共団体の責務の規定」が明記された点について、県内の教育界では「地方の裁量拡大という意味なら歓迎するが、財政負担の押し付けが気掛かり」との見方が出ている。基本理念に「『公共』の精神の涵(かん)養」を規定することが適当とされたことには、ボランティア関係者から期待の声が聞かれた。

 地方の責務の規定について鈴木善彦県教育長は「教育内容の充実に向けた、地方の取り組みを後押しするなら分かる。しかし、財政負担の地方転嫁という含みがあっては困る。『責務』が、何を指すのか見えにくい」と受け止める。

 静岡大教育学部の藤原文雄助教授(教育行政学)は教育振興基本計画との関連で「基本法を具体化させるための振興計画は、財源確保の根拠になる一方、地方の自主性を損なう恐れがあり、地方にとっては大きなジレンマになりそう」と分析する。

 公共の規定について、県ボランティア協会は「公共心は、だれもが安心して人間らしく生活できる社会の実現の基本。重視姿勢は評価できる」とした上で、「大前提となる主体性をどう育てるかが課題」とした。

 一方、個人と公共とのかかわりに関心を寄せる静岡大人文学部の伊藤恭彦助教授(政治学)は「自己実現と公共感覚の涵養をどう結び付けるか、という視点がない。個人から出発し、同じように自己実現を目指す身近な他者を尊重し、その意識を地域、国家、地球に拡大させていくという理念構成が必要」と指摘する。


読売 2003/03/21

中教審答申 与党内、法案提出巡り難航必至

 中教審答申を受けて、政府は教育基本法改正案作成に着手し、与党も五月の連休明けに、幹事長・政調会長らで構成する協議機関を設置して検討を進める方針だ。だが、与党内には異論もあり、政府の目指す「今国会中の改正案提出」が実現するかどうかは微妙だ。
 二十日の自民党教育基本法検討特命委員会では、出席者から「二十一世紀を担う日本人を育成する観点が不十分」「現行法の全面的見直しを明確にすべきだ」など踏み込みが足りないとの観点から不満が相次いだ。特命委員長の麻生政調会長は「法案化する時にきちっとする」と述べた。
 一方、公明党は二十日、「議論は慎重を期する必要があり、今国会の法案提出はすべきではない」との談話を発表した。答申が「国を愛する心」などを規定するよう求めている点を「個人の内心の自由に国家が関与するのは不適切」として、自民党と対立している。


読売 2003/03/21

中教審答申 戦後教育抜本見直し 「愛国心」「公共精神」 表現が二転三転

 二十日の中央教育審議会(鳥居泰彦会長、委員三十人)の教育基本法見直し答申は、新たに追加すべき基本理念として「国を愛する心」や「『公共』の精神」などを掲げ、「個人の尊厳」への偏重や「自由と放縦のはき違え」などを指摘されてきた戦後教育を抜本的に見直す意味を持つ。ただ、いずれの論点にも、委員から賛否両論が相次ぎ、表現は二転三転した。
 「国を愛する心」は、昨年十月にまとまった中間報告の素案段階では「愛国心」と表記されたが、「偏狭なナショナリズムとなってはいけない」などとする五、六人の委員の批判を受け、「国を愛する心」との表現に落ち着いた。また、「国家至上主義的考え方や全体主義的なものになってはならない」との付帯意見も付いた。
 「『公共』の精神」も、「戦前の滅私奉公になってはいけない」との委員二、三人の注文を踏まえ、国などの押しつけでないことを強調するため、「主体的に参画する『公共』の精神」などと表現を工夫。実質審議を終えた今月十日以降も、委員の意見を募って十数か所にわたって微修正を重ねた。
 梶田叡一委員(京都ノートルダム女子大学長)は、「五十年先を見通して教育を論じる際に、半世紀以上も前の大戦前へのノスタルジア(郷愁)も、過度の反省も有害無益だ」と述べ、今後は未来志向で議論することを求めている。
 基本理念のほか、議論を呼んだのは「宗教教育」だった。少年事件の凶悪化を背景に、「心の教育」の一環として、遠山文科相は「宗教的情操の涵養(かんよう)」という視点からの見直しを諮問した。
 二月十七日の中教審基本問題部会では、小野元之委員(前文科次官)が「宗教を大事にするといった前向きな表現があっていい」と口火を切ると、「宗教教育は異文化理解のため必要だ」という積極論と、「宗教は家庭で教えるべきものだ」との慎重論が交錯。結局、憲法が定める「信教の自由」という制約もあり、主に宗教の基礎的知識や意義などを教えることの重要性を記すのにとどめた。〈中教審答申の要旨23面〉
           
 《中教審の教育基本法見直し答申の骨子》
一、新たに追加する理念として〈1〉「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養〈2〉日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心の涵養〈3〉男女共同参画社会への寄与――などを規定する。
一、国と地方公共団体の責務、教育振興基本計画策定の根拠を規定する。
一、家庭の役割、学校・家庭・地域社会の連携・協力が重要と規定する。
一、宗教に関する寛容の態度や知識、宗教の持つ意義を尊重する旨を規定する。
        
 〈中央教育審議会〉
文部科学相の諮問機関。教育の振興や生涯学習の推進、スポーツ振興に関する重要事項を調査、審議する。文科省は中教審の答申を基に政策や法律改正などを進める。


読売 2003/03/21

中教審の教育基本法見直し 「個と公」など、読売新聞社の提言と一致

 教育改革については、読売新聞社も二〇〇〇年十一月に「責任ある自由を柱に新教育基本法を」と提言し、社会という「公」のために個人が何をすべきかという社会性を育てることの重要性を強調した。
 この点は、中教審の答申が示した「自由には規律と責任が伴う」「個と公のバランスが重要」などの方向性と合致。答申が新たに追加すべき基本理念に掲げた「社会の形成に主体的に参画する『公共』の精神、道徳心、自律心の涵養」も提言と重なっている。
 また、本紙が「国際競争力ある大学、大学院を」と提言した点についても、答申は、「世界に伍して競争力を発揮する」ための人材育成が必要と指摘。「大学・大学院は教育研究の充実を通じて重要な役割を担うことが期待」されているとし、提言に沿った内容となっている。


読売 2003/03/21

教育基本法見直し、中教審答申の要旨

 はじめに(略)
 第1章 教育の課題と今後の教育の基本的方向について(略)
 第2章 新しい時代にふさわしい  教育基本法の在り方について
 1 教育基本法改正の必要性と改正の視点
 戦後の我が国の教育は、教育基本法の精神に則(のっと)り行われてきたが、制定から半世紀以上を経て、社会状況が大きく変化し、また教育全般について様々な問題が生じている。教育の根本にまでさかのぼった改革が求められている。
 ((1))現行の教育基本法を貫く「個人の尊厳」「人格の完成」「平和的な国家及び社会の形成者」などの理念は、憲法の精神に則った普遍的なものとして今後とも大切にしていく。
 ((2))二十一世紀を切り開く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から、今日極めて重要と考えられる以下のような教育の理念や原則を明確にするため、教育基本法を改正する。
 〈1〉信頼される学校教育の確立
 一人一人の個性に応じ、基礎的・基本的な知識・技能や学ぶ意欲をしっかりと身に付けさせるとともに、道徳や芸術など情操を豊かにする教育や、健やかな体をはぐくむ教育を行い、その能力を最大限に伸ばしていくことが重要。グローバル化や情報化、地球環境問題への対応など時代や社会の変化に的確に対応したものとなることが重要。
 〈2〉「知」の世紀をリードする大学改革の推進
 国境を越えた大競争の時代に、我が国が世界に伍(ご)して競争力を発揮し、人類全体の発展に寄与していくためには、「知」の世紀をリードする創造性に富み、実践的能力を備えた多様な人材の育成が不可欠。そのために大学・大学院は教育研究の充実を通じて重要な役割を担うことが期待される。
 〈3〉家庭の教育力の回復、学校・家庭・地域社会の連携・協力の推進
 家庭は教育の原点であり、すべての教育の出発点である。家庭教育の重要性を踏まえてその役割を明確にするとともに学校・家庭・地域社会の三者が緊密に連携・協力して子どもの教育に当たる。
 〈4〉「公共」に主体的に参画する意識や態度の涵養(かんよう)
 二十一世紀の国家・社会の形成に主体的に参画する日本人の育成を図るため、政治や社会に関する豊かな知識や判断力、批判的精神を持って自ら考え、「公共」に主体的に参画し、公正なルールを形成し順守することを尊重する意識や態度を涵養することが重要。
 〈5〉日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養
 グローバル化が進展する中で、自らの国や地域の伝統・文化について理解を深め、尊重し、郷土や国を愛する心をはぐくむことは、日本人としてこれからの国際社会を生きていく上で、極めて大切。他の国や地域の伝統・文化に敬意を払い、国際社会の一員としての意識を涵養することが重要。
 〈6〉生涯学習社会の実現
 国民のだれもが生涯のいつでも、どこでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価されるような社会を実現することが重要。このことを踏まえて生涯学習の理念を明確にする。
 〈7〉教育振興基本計画の策定
 教育基本法に示された理念や原則を具体化していくためには、これからの教育に必要な施策を総合的、体系的に取りまとめる教育振興基本計画を策定し、政府全体で着実に実行することが重要であり、そのための法的根拠を明確にする。
 2 具体的な改正の方向
 (1)前文及び教育の基本理念
 〈前文〉教育理念を宣明し、教育の基本を確立する教育基本法の重要性を踏まえて、その趣旨を明らかにするために引き続き前文を置く▽法制定の目的、法を貫く教育の基調など、現行法の前文に定める基本的な考え方については、引き続き規定する。
 〈教育の基本理念〉教育は人格の完成を目指し、心身ともに健康な国民の育成を期して行われるものであるという現行法の基本理念を引き続き規定する。
 〈新たに規定する理念〉個人の自己実現と個性・能力、創造性の涵養▽感性、自然や環境とのかかわりの重視▽社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養▽日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養▽生涯学習の理念▽時代や社会の変化への対応▽職業生活との関連の明確化▽男女共同参画社会への寄与
 【個人の自己実現と個性・能力、創造性の涵養】
 国民一人一人が自らの生き方、在り方について考え、向上心を持ち、個性に応じて自己の能力を最大限に伸ばしていくことが重要であり、このような自己実現を図ることが人格の完成を目指すこととなる。科学技術の進歩を世界の発展と課題解決にいかすことが期待される中で、新しいものを生み出していく創造性の涵養が重要だ。
 【感性、自然や環境とのかかわりの重視】
 地球環境の保全が大きな課題となっている今日、自然と共に人は生きているものであり、自然を尊重し、愛することが、人間などの生命あるものを守り、慈しむことにつながることを理解することが重要だ。
 【社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養】
 国民が国家・社会の一員として、法や社会の規範の意義や役割について学び、自ら考え、自由で公正な社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神を涵養することが重要だ。さらに、社会の一員としての使命、役割を自覚し、自らを律して、その役割を実践するとともに社会における自他の関係の規律について学び、身に付けるなど、道徳心や倫理観、規範意識をはぐくむことが求められている。
 【日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養】
 外国が身近な存在となる中で、まず自らの国や地域の伝統・文化について理解を深め、尊重し、日本人であることの自覚や、郷土や国を愛する心の涵養を図ることが重要である。さらに、自らの国や地域を重んじるのと同様に他の国や地域の伝統・文化に対しても敬意を払い、国際社会の一員として他国から信頼される国を目指す意識を涵養することが重要。国を愛する心を大切にすることや我が国の伝統・文化を理解し尊重することが、国家至上主義的考え方や全体主義的なものになってはならない。
 【生涯学習の理念】
 だれもが生涯のいつでも、どこでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができるような社会を実現するため、生涯学習の理念がますます重要となる。
 【時代や社会の変化への対応】
 グローバル化や情報化の進展、地球環境問題の深刻化や科学技術の進歩など、国民を取り巻く環境は大きく変貌(へんぼう)を遂げており、教育も、これらの時代や社会の変化に常に的確に対応していくことが重要である。
 【職業生活との関連の明確化】
 子どもに的確な職業観・勤労観や職業に関する知識・技能を身に付けさせるとともに、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力や態度をはぐくむための教育の充実に努めることが重要であり、社会においても生涯にわたり職業にかかわる学習機会を充実していくことが重要である。
 【男女共同参画社会への寄与】
 男女共同参画は、まだ十分には実現しておらず、男女が互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会を実現するためには、現行法の理念は今日においてより重要。なお、現在では、男女共学の趣旨が広く浸透しており、「男女の共学は認められなければならない」旨の規定は削除することが適当。
 (2)教育の機会均等、義務教育
 〈1〉教育の機会均等
 ▽教育の機会均等の原則、奨学の規定は、引き続き規定することが適当。
 〈2〉義務教育
 義務教育期間9年間、義務教育の授業料無償の規定は、引き続き規定することが適当。
 (3)国・地方公共団体の責務
 ▽教育は不当な支配に服してはならないとする規定は、引き続き規定することが適当。
 ▽国と地方公共団体の適切な役割分担を踏まえて、教育における国と地方公共団体の責務について規定することが適当。
 ▽教育振興基本計画の策定の根拠を規定することが適当。
 (4)学校・家庭・地域社会の役割等
 〈1〉学校
 ▽学校の基本的な役割について、教育を受ける者の発達段階に応じて、知・徳・体の調和のとれた教育を行うとともに、生涯学習の理念の実現に寄与するという観点から簡潔に規定することが適当。その際、大学・大学院の役割及び私立学校の役割の重要性を踏まえて規定することが適当。
 ▽学校の設置者の規定については、引き続き規定することが適当。
 〈2〉教員
 ▽学校教育における教員の重要性を踏まえて、現行法の規定に加えて、研究と修養に励み、資質向上を図ることの必要性について規定することが適当。
 〈3〉家庭教育
 ▽家庭は、子どもの教育に第一義的に責任があることを踏まえて、家庭教育の役割について新たに規定することが適当。
 ▽家庭教育の充実を図ることが重要であることを踏まえて、国や地方公共団体による家庭教育の支援について規定することが適当。
 〈4〉社会教育
 ▽社会教育は国及び地方公共団体によって奨励されるべきであることを引き続き規定することが適当。
 ▽学習機会の充実等を図ることが重要であることを踏まえて、国や地方公共団体による社会教育の振興について規定することが適当。
 〈5〉学校・家庭・地域社会の連携・協力
 ▽教育の目的を実現するため、学校・家庭・地域社会の三者の連携・協力が重要であり、その旨を規定することが適当。
 (5)教育上の重要な事項
 〈1〉国家・社会の主体的な形成者としての教養
 ▽自由で公正な社会の形成者として、国家・社会の諸問題の解決に主体的にかかわっていく意識や態度を涵養することが重要であり、その旨を適切に規定することが適当。
 ▽学校における特定の党派的政治教育等の禁止については、引き続き規定することが適当。
 〈2〉宗教に関する教育
 ▽宗教に関する寛容の態度や知識、宗教の持つ意義を尊重することが重要であり、その旨を適切に規定することが適当。
 ▽国公立学校における特定の宗教のための宗教教育や宗教的活動の禁止については、引き続き規定することが適当。
 ▽宗教は、人間としてどう在るべきか、与えられた命をどう生きるかという個人の生き方にかかわるものであると同時に、社会生活において重要な意義を持つものであり、人類が受け継いできた重要な文化だ。このような宗教の意義を客観的に学ぶことは大変重要だ。
 ▽人格の形成を図る上で、宗教的情操をはぐくむことは、大変重要である。
 (6)その他留意事項(略)
 3 教育基本法改正と教育改革の推進
 ▽法制化に際しては、国民に分かりやすい明確で簡潔なものとなるよう配慮する必要がある。
 第3章 教育振興基本計画の在り方について  
 1 教育振興基本計画策定の必要性
 政府として、未来への先行投資である教育を重視するという明確なメッセージを国民に伝え、施策を国民に分かりやすく示すという説明責任を果たすためにも、教育の根本法である教育基本法に根拠を置いた、教育振興に関する基本計画を策定する必要がある。
 2 教育振興基本計画の基本的考え方(略)
 
 《教育基本法見直しの動き》(肩書は当時)
1946年 8月 教育刷新委員会(教刷委)発足
     11月 教刷委が教育基本法の要綱を決定
  47年 3月 教育基本法案を閣議決定。教育基本法成立・公布
  52年 6月 中央教育審議会(中教審)発足
  56年 2月 清瀬一郎文相が「国に対する忠誠」が欠けているとして基本法
         改正の考えを国会で答弁
  63年 6月 荒木万寿夫文相が法改正を主張し「期待される人間像」を中教
         審に諮問
  84年 7月 森喜朗文相が臨時教育審議会設置法案を巡り「基本法改正は考
         えていない」と国会答弁
2000年 3月 教育改革国民会議(江崎玲於奈座長)発足
      9月 教育改革国民会議が「(教育基本法について)意見の集約はみ
         られていない」とする中間報告を提出
     12月 教育改革国民会議が「教育基本法の見直しに取り組むことが必
         要」とする最終報告を提出。町村信孝文相が全面改正の必要性
         を就任後の記者会見で表明
2001年11月 遠山敦子文科相が新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方
         を中教審に諮問
2002年11月 中教審が教育基本法見直しを提言した中間報告を提出
  11―12月 中教審が東京など全国5か所で公聴会を開催
2003年 3月 中教審が教育基本法見直しを答申


毎日 2003/03/20

教育基本法:日教組などが改正反対の声明

 中央教育審議会(鳥居泰彦会長)が20日、「郷土や国を愛する心」など8項目を教育基本法に盛り込んだ法改正を求める最終答申をまとめたことに対し、日教組など教育関係や市民団体が同日、改正に反対する声明を相次いで発表した。

 日教組は榊原長一委員長が会見し「国民的合意が不十分で法改正は容認できない」と反対を表明。再検討を求めるとともに、国会に憲法調査会と同様の機関を設けて審議することを要求した。また、「重大な決意を持って改正を阻止する」とし、国会前での座り込みやハンガーストライキなども視野に反対運動を進めるという。

 全日本教職員組合も「愛国心教育を押しつける法改正に反対する」とアピールを発表した。このほか、教育学者や有識者らで作る「21世紀に教育基本法を生かす会」や「教育基本法『改正』反対市民連絡会」などの市民団体も「答申は子供たちを不幸にする歴
史の逆戻りをもたらす」「伝統文化の尊重や、郷土や国を愛する心の涵養(かんよう)は、憲法で保障する思想・良心の自由など基本的人権を侵害するもの」などとする反対声明を公表した。 【澤圭一郎】


共同 2003/03/20

 中教審の答申「国のための教育だ」
 市民団体が反対訴える

 教育基本法改正を求めた中教審の答申を受け、市民団体や教組などが20日、都内で相次いで記者会見し「国家のための教育を進めようとしている」と改正反対を訴えた。

 「教育と文化を世界に開く会」呼び掛け人の西原博史早稲田大教授は「戦前の軍国主義教育を反省した現行法の成立経緯を忘れ、心のありようを上から指導してお国のための教育をしようとしている」と批判した。

 「21世紀に教育基本法を生かす会」代表の大田尭東大名誉教授は「国際的な視野を欠いたミニ一国主義の人材養成計画だ」と指摘。

 日教組の榊原長一委員長は「法の改悪に着手するなら大規模な集会の開催や国会前の座り込み、ハンストなど、重大な決意で反対運動を進める」と語った。


共同 2003/03/20

 「21世紀の教育の方向示した」
 鳥居中教審会長が会見

 教育基本法の改正を提言した中教審の鳥居泰彦会長は20日、記者会見し「21世紀の教育が目指す基本的方向を示したと確信する」との見解を示した。

 教育行政には「最大の危機は人の心の危機だ。答申が掲げた『自己実現を目指す自立した人間の育成』などの目標の一つでも崩れたら日本は危機に向かう」と、提言を生かすよう求めた。

 答申を受けた遠山敦子文部科学相は「今までに受けた一番重い答申だ」と感想を述べた。法案化作業は「教育の根本法である教育基本法の改正は英知を絞らないといけない。しっかり準備し、状況が整えば提出する」と方針を説明した。


共同 2003/03/20

 愛国心など盛り込む
 中教審答申、教育基本法初の改正へ

 中央教育審議会(鳥居泰彦会長)は20日、教育基本法を全面改正し、愛国心や公共心の涵養(かんよう)などを盛り込むよう求める答申をまとめ、遠山敦子文部科学相に提出した。昨年11月の中間報告で保留とした宗教教育では「宗教的情操の涵養」が焦点となったが、法規定の提言は見送った。

 現行法は、戦前の国家至上主義的な教育の反省に立ち「個人の尊厳」や「真理と平和の希求」を掲げて「教育の憲法」と位置付けられてきたが、1947年の制定以来、初めて改正に向かって動き出す。

 文部科学省は改正法案の策定作業に着手、開会中の通常国会への法案提出を目指す。

 しかし、教育の基本理念の転換には教育現場を中心に強い抵抗感がある。また与党内でも自民党が改正に意欲的なのに対し、公明党は慎重姿勢で、対応が割れている。与党3党は5月の連休明けにも協議機関を設置し、調整を図る方針。


毎日 2003/03/20

教育基本法:愛国心など8理念盛る 改正案最終答申 

文部科学相の諮問機関「中央教育審議会」(鳥居泰彦会長)は20日、教育基本法の見直しを求める答申をまとめ、遠山敦子文科相に提出した。「21世紀を切り拓(ひら)く心豊かでたくましい日本人」を育成するため法改正が必要だとし、「公共の精神」や「日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心」「男女共同参画社会への寄与」など8項目の理念を盛り込むよう求めた。文科省は今国会に改正法案提出を目指す。1947年の制定以来、戦後の教育理念を支えてきた同法は、56年ぶりに改正へ向け動き出す。 
 答申では、家庭教育の役割や、学校、家庭、地域社会の協力の必要性なども盛り込むよう求めた。また、国の教育目標や具体的政策を示す「教育振興基本計画」に法的な根拠を与えることも提言した。同計画は今後、5年ごとに文科省が定めるもので、同省では計画に盛り込む目標として、いじめや校内暴力の半減や学力向上、大学改革など43項目を例示している。

 答申は、現行条文も大半を生かすよう提言していることから、改正法案は限定的になるとみられる。 【澤圭一郎】

 教育基本法に関する中央教育審議会答申は、現行法の理念を尊重し、部分的な手直しを求める内容となった。改正が限定的なだけに、今後作成される改正法案などで趣旨がどう具体化されるか見極めないと、教育現場にどう影響するか判然としない。しかし、半世紀以上にわたって手つかずだった同法に「時代に合わない部分がある」と明言した意味は大きく、学校教育法の改正や学習指導要領の改定などにつながれば、現場を大きく変化させる可能性もある。

 今回の見直しは00年12月、故小渕恵三首相が発足させた「教育改革国民会議」が提言したことに始まる。自民党には大幅改正を求める意見が強かったが、答申は「郷土や国を愛する心」などを盛り込むよう求めたものの、大筋で現行法の理念を踏襲した。同省幹部は「『中教審は政治から中立』という意思が強く働いた結果」と話す。

 その分、小手先の見直しとの印象が強く、「結局、積極的な改正の意味が見出だせなかったのではないか」(堀尾輝久・東京大名誉教授)といった厳しい見方もある。

 今後、文科省は与党と協議しながら法案を作成するが、ここでは文科省の裁量の余地も大きい。国会審議でもさまざまな意見が出ることが予想される。改正論議は緒についたばかりだ。 【澤圭一郎】


朝日 2003/03/20

中央教育審、教育基本法改正を答申

 中央教育審議会(鳥居泰彦会長)は20日、「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」の提言をまとめ、遠山文部科学相に答申した。教育の「危機的な状況」の打破などを理由に基本法改正を求めている。改正は戦後教育を根幹から変える可能性があるが、反対論も根強く、実現までは曲折が予想される。

 答申では、学校教育法など教育関連法令から学習指導要領に至るまで、教育にかかわるすべての制度についても改正の趣旨を反映させる見直しを要望している。

 中教審は01年11月に遠山文科相の諮問を受け、審議を続けていた。文科省は今後、政府・与党と調整を図りながら、開会中の通常国会への提出を視野に法案づくりを進める。

 答申は「危機的な状況」について、「青少年が夢や目標を持ちにくくなり、規範意識や道徳心を低下させている」「いじめ、不登校、学級崩壊などの深刻な問題が依然として存在している」などと説明。さらに、現行法の制定時からは社会状況が変わって教育で重視すべき理念も変化していると指摘し、改正の必要性を強調した。

 改正にあたっての目標には「21世紀を切り拓(ひら)く心豊かでたくましい日本人の育成」を掲げた。

 そのために新たに必要な理念として「社会の形成に主体的に参画する『公共』の精神、道徳心、自律心の涵養(かんよう)」「日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養」といった8項目を列挙し、基本法の前文か条文に盛り込むよう提言した。

 5年先を目標として政府全体がどのような教育政策に取り組むかを明記する基本計画の策定の必要性も唱えた。計画をつくる根拠となる規定を基本法に置き、法改正後、政府が速やかに策定作業にとりかかることを求めた。


読売 2003/03/20

教育基本法見直し答申 公共の精神など盛る

 文部科学相の諮問機関・中央教育審議会(中教審、鳥居泰彦会長)は二十日午後、教育基本法の全面的な見直しを求める答申を決定、遠山文科相に提出した。答申は、現行法に追加すべき教育の基本理念として、「『公共』の精神」「郷土や国を愛する心」のほか、昨年十一月の中間報告になかった「男女共同参画社会への寄与」を盛り込んでいる。文科省は今国会への提出を目指し、基本法改正案の作成に入る。教育基本法改正は一九四七年の制定以来初めて。
 答申は、新たな基本理念として、〈1〉個人の自己実現と個性・能力、創造性の涵養(かんよう)〈2〉社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養〈3〉日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養〈4〉男女共同参画社会への寄与――など八項目を掲げている。
 戦後教育が「個人の尊厳」に偏重していたとの指摘を踏まえ、「個と公のバランスが重要」として、「『公共』の精神」を育てることを求めている。さらに、国際化が進む中、日本人としての自覚の大切さを指摘し、「郷土や国を愛する心」の育成を訴えている。
 男女共同参画については、現行法の男女共学の規定は既に定着したため、「削除することが適当」としたうえ、男女共同参画社会の実現を目指すよう提案している。焦点の「宗教教育」については、「憲法の『信教の自由』に抵触する恐れがある」との意見に配慮し、「宗教の意義を客観的に学ぶことは大変重要」などの表現にとどめている。


読売 2003/03/15

自民県連、教育基本法改正求め県議会で意見書発議=茨城 

 自民党は十四日の県議会本会議で、「教育基本法改正を求める意見書」を発議した。近く同党の賛成多数で可決、小泉首相らに提出される。文部科学省は「県議会が法改正を求める意見書を可決した例はこれまで承知していない」(教育改革官室)としている。
 意見書では、〈1〉家庭、郷土、国家を愛し、気概に満ちあふれ、国際社会で活躍する日本人を育成する〈2〉思いやり、公共心、自律心、道徳心、伝統、文化について日本人としてのアイデンティティーを確立する――ために、今後の教育の方向性を真剣に検討して国民に示す時と強調。「教育基本法を早期に改正されるよう強く要望する」とした。
 自民党県連では「教育は今、多くの問題を抱えている。戦後半世紀が経過し、旧態依然の教育基本法をまず変えなくてはならない」(幹部)としている。
 同法をめぐっては、昨年十一月の中央教育審議会(中教審)が全面見直しを求める中間報告をまとめた。自民、公明、保守新党の与党三党も、党幹部が連休明けにこの問題を協議することで一致している。
 ただ、公明党内には見直しに慎重論が根強く、自民党県連が今回、県議会に意見書を提出したことに公明党県本部では「国政の場で結論をだすべきで、県レベルでは議論できない。意見書には反対だ」(井手義弘県幹事長)としている。


共同 2003/03/12

〈滅私奉公は悪いのか〉

〇…森喜朗前首相は11日の自民党教育基本法検討特命委員会で、中央教育審議会の最終答申に盛り込んだ「新たな公共」の概念について文部科学省幹部が「滅私奉公ではない。誤解を招かないようにした」と説明すると「滅私奉公は悪いことか」とかみついた。さらに「答申案はなぜ『知・徳・体の調和の取れた教育を行う』と、知が先に来るのか」と声を荒らげた。森氏が座右の銘にしている「滅私奉公」を否定された上に「戦後教育は知育偏重に陥っている」という持論も受け入れられなかった、と思ったようだ。(N)


毎日 2003/03/04

教育基本法:最終答申案を審議 中教審  

 教育基本法の見直しを検討している中央教育審議会(鳥居泰彦会長)の基本問題部会が3日開かれ、最終答申案について審議した。
 「日本の伝統、文化の尊重」「郷土や国を愛する心」などを新たな理念として盛り込むことは了承された。しかし、それらの理念について、中間報告で盛り込まれた「国家至上主義的考え方や全体主義的なものになってはならない」とする歯止めの文言に対し、一部委員から「時代錯誤の表現で必要ない」と削除を求める意見が出た。

 同部会は、さらに討議し、今月下旬に最終答申をまとめる。 【澤圭一郎】


読売 2003/03/04

宗教教育は「知識」重視 中教審が教育基本法見直し素案

 文部科学相の諮問機関である中央教育審議会(中教審、鳥居泰彦会長)は三日、基本問題部会を開き、教育基本法見直しの素案を公表した。
 「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」と題した素案では、「宗教教育」について、「心の教育」の必要性にまで踏み込まず、知識に関する教育の重視を提案するにとどまった。現行法に追加すべき教育の基本理念としては、中間報告で示された「『公共』の精神」「郷土や国を愛する心」に加え、「男女共同参画社会への寄与」を新たに盛り込むよう求めた。
 一方、教育振興基本計画では、今後五年間に達成すべき教育施策の目標として「授業が分からない子供の半減」「いじめ、校内暴力を五年間で半減」など三十七項目を例示した。


毎日 2003/03/01

教育基本法:男女共同参画社会への寄与盛り込む 中教審が原案


 教育基本法の見直しを検討している中央教育審議会(鳥居泰彦会長)の最終答申の原案が1日、判明した。現行法にある男女共学の規定を削除し、男女共同参画社会に寄与することを新しい理念として盛り込んでいる。また、削除も検討された前文は、法制定の目的や教育の基調など現行法の考え方を踏襲して残す、と結論付けている。最終答申は、今月末にまとめる予定。

 原案は、昨年11月の中間報告を基本的に踏襲したうえで、政府に対し「基本法改正に取り組むことを期待する」と踏み込んだ表現で法改正を求めた。

 中間報告でも強調された「郷土や国を愛する心」「公共の精神、道徳心」などを、新たな理念として前文か条文に規定することを改めて提言し、さらに「男女共同参画社会への寄与」も理念として追加。趣旨が浸透し、性別による教育機会の差がなくなったとして、現行の「男女の共学は認められなければならない」とする規定の削除を求めている。

 宗教教育については、宗教への寛容の態度や知識、社会生活における意義の尊重と国公立学校での宗教教育の禁止を現行通りに定めるように要請した。しかし、諮問で検討を求められた宗教的情操の育成は、現在の道徳教育でも進められるとして、基本法での対応を避けた。

 このほか、「知的・道徳的・身体的能力を伸ばす」とする学校の役割を初めて明記。その際、大学や私立校の重要性も踏まえるよう求めた。さらに教員について、「自ら研修・修養に励み、資質向上を図る必要性」を定め、家庭教育も新たに規定することを提言している。 【澤圭一郎】


朝日 2003/03/01

中教審、宗教的情操明記せず 答申案に新理念8項目


 教育基本法改正に向けた検討を続けている文部科学相の諮問機関・中央教育審議会がまとめる最終答申の素案が明らかになった。新たに法に規定する理念として「国を愛する心」など8項目を確定。法律の冒頭にある「前文」を残して、前文か条文にそれらの理念を盛り込む方針を示した。「宗教的情操の育成」の条文への明記は見送っている。最終答申は今月下旬にまとめる予定だ。

 中教審は昨年11月に中間報告を発表して改正の必要性を明確に打ち出したが、前文を残すかどうかや、宗教教育の記述をどうするかが大きな焦点として残っていた。

 素案は、前文を残す理由を「教育の基本を確立する重要な法律であることを踏まえた」と説明。法制定の目的などを引き続き規定するとした。

 「人格の完成」など現行法が定めている基本理念については、「普遍的なもの」として残すことを明示。そのうえで「日本の伝統、文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養(かんよう)」といった8項目の理念を、「前文か各条文にわかりやすく簡潔に規定することが適当」としている。

 この8項目のうち、「男女共同参画」を除く7項目は中間報告でも同趣旨の内容が示されていたが、何を法に盛り込むかは「引き続き検討する」という段階にとどまっていた。

 宗教教育に関しては、中間報告段階では「道徳教育の背景として宗教的情操の涵養が重要だ」との積極的な意見の一方、「宗教教育は基本的に家庭や個人の問題だ」といった反論もあり、まとまっていなかった。

 素案は、国公立の学校での特定の宗教のための教育を禁止する現行法の規定は残しながら、宗教に関する寛容の態度や知識、宗教が人間の社会生活に果たしてきた意義を尊重する旨を規定するとした。しかし、「宗教的情操の育成」については「大変重要である」などと言及しながら、条文化を求めることは避けた。

    ◇

■新たに規定する理念

(1)個人の自己実現と個性・能力の伸長、創造性の涵養

(2)感性、自然や環境とのかかわり

(3)社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養

(4)日本の伝統、文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養

(5)生涯学習の理念

(6)時代や社会の変化への対応

(7)職業生活との関連の明確化

(8)男女共同参画社会への寄与


読売 2003/03/01

中教審、男女共同参画社会への寄与など求める素案

 文部科学相の諮問機関・中央教育審議会(中教審、鳥居泰彦会長)がまとめた教育基本法見直しを求める答申の素案が27日、明らかになった。

 現行法に追加すべき教育の基本理念として、中間報告で示された「『公共』の精神」「郷土や国を愛する心」に加え、「男女共同参画社会への寄与」を新たに盛り込むことを求めている。焦点の「宗教教育」では、主に知識面の教育に重点を置くこととし、「宗教的情操をはぐくむ」といった心の教育に踏み込んだ提言は避けた。

 素案は来月3日の中教審基本問題部会で公表される見通しだ。素案では、新たな基本理念として、〈1〉社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養(かんよう)〈2〉日本の伝統、文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養〈3〉職業生活との関連の明確化〈4〉男女共同参画社会への寄与――など8項目を挙げた。

 男女共同参画については、1947年に施行された現行の教育基本法が規定する「男女共学」が一般的になっているため、さらに進めて男女共同参画社会の実現を求めることにした。現行の男女共学の規定は「削除することが適当」としている。

 現行法の前文に関しては素案は「基本的な考え方については引き続き規定することが適当」との判断を示している。このため、現行法にある「個人の尊厳」「真理と平和を希求」などの理念は残される見通しとなった。


共同 2003/03/01

「宗教的情操」盛り込む 教基法改正の答申素案

 教育基本法改正に関する中教審(鳥居泰彦会長)の答申素案が28日、明らかになった。
 昨秋の中間報告で結論を保留していた宗教教育については「宗教に関する寛容の態度や知識、社会生活における意義を尊重することが重要」と提言。委員の中に慎重論が強い「宗教的情操の涵養(かんよう)」も「人格の形成を図る上で大変重要」として盛り込んだ。教育の基本理念では、中間報告になかった「男女共同参画社会への寄与」も挙げた。

 中間報告で「あらためて検討する」としていた前文は、「個人の尊重」「真理と平和」など現行法の基本線を踏襲する方向を示した。

 中教審は基本問題部会で3、4回の審議を経て、3月下旬の答申提出を目指している。


読売 2003/02/28

27日明らかになった教育基本法見直し答申素案要旨

 中教審がまとめた答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」の素案要旨(教育基本法関連部分)は次の通り。〈本文記事2面〉
 1 教育基本法改正の必要性と改正の視点 現行法の「個人の尊厳」「人格の完成」「平和的な国家及び社会の形成者」などの理念は今後も大切
 2 具体的な改正の方向
 (1)前文及び教育の基本理念〈前文〉教育基本法の重要性を踏まえて、その趣旨を明らかにするために引き続き前文を置くことが適当〈新たに規定する理念〉〈1〉個人の自己実現と個性・能力の伸長、創造性の涵養(かんよう)〈2〉感性、自然や環境とのかかわり〈3〉社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養〈4〉日本の伝統、文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養〈5〉生涯学習の理念〈6〉時代や社会の変化への対応〈7〉職業生活との関連の明確化〈8〉男女共同参画社会への寄与
 (2)(3)(4)略
 (5)教育上の重要な事項〈2〉宗教に関する教育 宗教に関する寛容の態度や知識、宗教の社会生活における意義を尊重することが重要。
 (6)略


読売 2003/02/28

教育基本法見直し 「男女共同参画に寄与」盛る/中教審素案

 文部科学相の諮問機関・中央教育審議会(中教審、鳥居泰彦会長)がまとめた教育基本法見直しを求める答申の素案が二十七日、明らかになった。現行法に追加すべき教育の基本理念として、中間報告で示された「『公共』の精神」「郷土や国を愛する心」に加え、「男女共同参画社会への寄与」を新たに盛り込むことを求めている。焦点の「宗教教育」では、主に知識面の教育に重点を置くこととし、「宗教的情操をはぐくむ」といった心の教育に踏み込んだ提言は避けた。
 素案は来月三日の中教審基本問題部会で公表される見通しだ。素案では、新たな基本理念として、〈1〉社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心の涵養(かんよう)〈2〉日本の伝統、文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養〈3〉職業生活との関連の明確化〈4〉男女共同参画社会への寄与――など八項目を挙げた。
 男女共同参画については、一九四七年に施行された現行の教育基本法が規定する「男女共学」が一般的になっているため、さらに進めて男女共同参画社会の実現を求めることにした。現行の男女共学の規定は「削除することが適当」としている。
 現行法の前文に関しては素案は「基本的な考え方については引き続き規定することが適当」との判断を示している。このため、現行法にある「個人の尊厳」「真理と平和を希求」などの理念は残される見通しとなった。〈答申素案要旨4面〉


共同 2003/01/08

基本法改正あらためて反対 日教組委員長

 日教組の榊原長一委員長は8日、東京都内で開いた「新春のつどい」であいさつし、今春に中教審が答申予定の教育基本法改正について「基本法を変えても教育の問題は解決しない。どうしても見直さなければならない理由が見当たらない」と述べ、あらためて反対の姿勢を示した。

 榊原委員長は改正の動きを「市場原理主義と復古的なナショナリズムでこの国を変える政治的な思惑だ」と指摘。「見直すのではなく、その理念を今こそ実現すべきだという結論を出すよう中教審に切に要望する」と訴えた。


毎日・福岡版 2002/12/26

福岡ニュース - 12月26日(木)21時17分

[新教育の森]九州・西中国 賛否の中“愛国心”通知表 /福岡

 ◇福岡市立小学校の半数採用

 福岡市の市立小学校の半分で24日、「国を愛する心情」や「日本人としての自覚」などの評価項目を取り入れた通知表が子供たちに手渡された。10月に問題が浮上してから初めての終業式。在日韓国・朝鮮人団体などが削除・修正を求めた結果、通知表に「心情や自覚が評価対象ではない」とする“説明文”を添えた学校もあった。教育基本法の見直しを進める文部科学相の諮問機関・中央教育審議会は中間報告で「郷土や国を愛する心」を盛り込むことを提言。福岡での論議が今後、全国に広がる可能性もある。【綿貫洋】

 ◇戦前とは質が異なる−−校長会長

 ◇差別や偏見が心配−−在日外国人

 通知表は同市立小学校校長会(中島紘昭会長)が、学習指導要領に基づいて作成した。通知表の内容に規定はなく、学校独自で作成したり同市のように校長会などで作っている。“愛国心”通知表は、同市立小(全144校)のうち51校がそのまま採用し、18校が評価項目に「日本人」の文言を入れて使用。計69校が「日本人としての自覚」の通知表を使っている。
 中島会長は「外国を敵視していた軍国主義時代の愛国心と、国を愛する心情とは違う。憲法にも教育基本法にも平和がうたってある中、国を愛する心情は戦前の愛国心とは全然質が異なる」と強調する。
 24日の終業式。「日本人としての自覚」の通知表を使ったある小学校は、6年生に通知表とともに「通知表の見方について」と題する1枚のプリントを配った。
 《「国を愛する心情」と「日本人としての自覚」を評価の対象としているものではなく、学習への「関心・意欲・態度」を評価する項目に当たります……》
 同校によると、在日韓国・朝鮮人(コリアン)の保護者と協議を重ねてプリントを添えることになったという。同校は「心情や自覚をそのまま評価するものと誤解を招いている。保護者に配慮してプリントを配った」と話す。ある在日コリアンの保護者は「納得はしていないが一歩前進。3学期には削除してほしい」と話した。
 校長会は来年2月には03年度の通知表の検討を始める。一連の“愛国心”論議で「国を愛する心情」と「日本人としての自覚」がどうなるか。

   ◇

 「子供にA級日本人、C級日本人のレッテルを張るようなものだ。在日(コリアン)を排除することもありうるのでは」。先月30日、福岡市であった“愛国心”通知表をテーマにしたシンポジウムで、在日コリアンの弁護士、李博盛さん(40)は怒りで声を震わせた。
 李さんらが心配するのは「日本人としての自覚」が十分でないとの理由で、在日外国人の子供たちが差別や偏見の対象になることだ。
 シンポジウムのパネリストの出水薫・九大大学院法学研究院助教授は「一緒に社会を作っている人への配慮がすっぽり抜け落ちているのではないか。多数派と少数派が一緒に学ぶ場がなくなる状況は、大人が阻止しなければならない」と述べ“愛国心”通知表に警鐘を鳴らした。
 また「市民団体が声を上げるまで気付かなかったことに市民として鈍感だった」「戦前の考えを押し付けられる危険を感じる」などの反省や不安の声も出された。

 ◇勉強の姿勢を評価−−柴田守・福岡市教委初等教育課長
 通知表の「国を愛する心情」「日本人としての自覚」は子供の心情や自覚そのものを評価するものではなく、心情や自覚を持とうとする意欲や関心など歴史を勉強する姿勢を評価するものだ。通知表は学習指導要領に基づいて簡潔な言葉で書いてあるので、十分でない点もある。そこは各学校で点検したり、保護者とも協議するよう指導している。ただ、通知表の採用、修正・削除などは各学校の裁量になる。通知表に“説明文”のプリントを添えたのも学校の裁量。国際理解や人権の教育は日常的に力を入れており、差別や人権を大事にしていくことは大前提。この通知表が差別につながるとは考えていない。

 ◇客観評価できるのか−−門田見昌明・元西南学院大学教授(教育制度史)
 国を愛することは悪くはないが、その心情や自覚はさまざまな個性が出てくるものだ。教育基本法も個々人の人格形成を目標としている。心情や自覚ではなく「関心、意欲、態度で総合的に評価する」としているが、本当に教員が客観的な評価ができるのか。最近は授業中に手を挙げた回数で子供を評価する教師が増えている。しかし、もともと“愛国心”が何かを示しにくいものなのに、手を多く挙げた子供が高く評価され、納得いかずに黙っている子供は低く評価されてしまうのではないか。そんな状況では子供は委縮してしまう。そんな抽象的なことで客観評価していいのかどうかの議論が必要だ。

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 ◇一日中教審・福岡会場−−意見発表10人の主張
 中央教育審議会は、来春をめどにまとめる最終答申に国民の意見を反映しようと、全国5カ所で公聴会「一日中央教育審議会」を開いた。九州・西中国で唯一行われた福岡会場で意見を発表した10人の“愛国心”に対する主張を紹介する。

 ◇福岡市の中学校女性教員(39)
 日本人のアイデンティティーを教育基本法でくくっていいのだろうか。伝統には女性差別に根ざしたものもあり、検証が必要だ。

 ◇大分県津久見市の小学校女性教員(39)
 国に従順な国民の育成を迫っているようだ。国を愛せよと言う前に、国がまず子供を愛してほしい。その先に自分の国や他の国が大切に思えるはず。

 ◇福岡県の公立高校女性教員(44)
 「たくましい日本人の育成」に心から賛同する。公私の区別がつかず、あまりに歴史を知らない子供を見るにつけ、日本人としてのアイデンティティーの確立が必要だ。

 ◇福岡県田川市の小学校男性教員(43)
 心たくましい日本人の育成が不十分というが、心を法律で定めるのは憲法の思想・信条の自由にも反する。教育基本法に手を加える時期ではない。

 ◇佐賀県の男子大学生(23)
 愛国心の導入に賛成する。愛国心を否定する人は国家と個人を分離している。それはしつけの範囲内で、愛国心の質こそ論議すべきだ。

 ◇福岡県のパート勤務女性(46)
 9歳で台湾から日本に来て、17歳で日本国籍を得た。自国の文化を誇るだけでなく、欠点も認める寛容な心を持ってほしい。愛国心は教えるのではなく、はぐくむものだ。

 ◇大分県の男性会社員(46)
 教育基本法の半世紀が残したのは精神的荒廃。立脚すべき伝統文化も見失っている。まず、自分の国を肯定的に見ることが必要で、自らをさげすむような国ではいけない。

 ◇福岡県大和町の中学校女性教員(50)
 二度と戦争をしないと誓った憲法に準じて作った教基法は、教育の理想として光り輝いている。中間報告の初めに改革ありきという考えは間違っている。

 ◇岡山県の短大男性教員(41)
 教育基本法は理念高く素晴らしい内容。改正する前に法の理念を広く啓発したらどうか。国民の議論を経た後で改正しても遅くない。

 ◇松山青年会議所理事長=男性(37)
 教育勅語がなくなって「自分さえよければ」の風潮が強まった。国民が義務を果たすことで民主主義国家を支えており、愛国心をはぐくむことが民主主義である。

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 ◆中教審の教育基本法見直し中間報告(要旨)◆

 【見直しの視点】
 現行の教育基本法には、新しい時代を切りひらく、心豊かでたくましい日本人を育成する観点から重要な理念や原則が不十分。

 【教育の基本理念】
 新たに追加すべき理念として以下のものが考えられる。
 (1)個人の自己実現と個性・能力の伸長、創造性のかん養(2)感性、自然や環境とのかかわり(3)社会の形成に主体的に参画する「公共」の精神、道徳心、自律心(4)日本人としてのアイデンティティー(伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心)と国際性(国際社会の一員としての意識)(5)生涯学習の理念(6)時代や社会の変化への対応(7)職業生活との関連の明確化

 【教育を受ける権利、義務教育など】
 教育の機会均等は将来にわたり大切にすべき原則。義務教育は基本的に現行法の規定を維持しつつ、制度をできるだけ弾力化する方向。教育の基本理念に男女共同参画社会の実現や男女平等の促進に寄与するという趣旨を新たに規定する必要がある。

 【学校、家庭、地域社会の役割】
 以下の点について新たに規定する必要がある。
 (1)学校の役割について「知・徳・体」の教育(2)教員の使命感や責務、資質向上や研修の重要性(3)家庭(保護者)の果たすべき役割や責任(4)学校・家庭・地域の連携や協力

 ■メモ

 ◇“愛国心”通知表問題
 福岡市の小学校が採用した6年生の社会科の評価に“愛国心”を問う項目があり問題化した。文面は次の通り。
 《我が国の歴史や伝統を大切にし国を愛する心情をもつとともに、平和を願う世界の中の日本人としての自覚をもとうとする▽我が国の歴史や政治、国際理解に関する社会的事象をより広い視野から考える▽社会的事象を具体的に調査し、地図や年表などの基礎的資料を効果的に活用し、表現する▽我が国の歴史や政治、我が国と関係の深い国の生活や国際社会における我が国の役割を理解している》

 10月上旬に、在日韓国・朝鮮人らで作る市民団体「ウリ・サフェ」が福岡市教委へ「日本人としての自覚」の削除・修正を要望した。以降、同団体のホームページには「愛国心という思想を徒党を組んで弾圧していることについて謝罪しろ」など、中傷する書き込みが相次いだ。(毎日新聞)
[12月26日21時17分更新]


読売 2002/12/15

「家庭教育重視を」…中教審の地方公聴会終了

 「国や郷土を愛する心」や「公共」の理念を盛り込むよう教育基本法の見直しを提言した中央教育審議会(鳥居泰彦会長)の中間報告に関する地方公聴会が15日、秋田市で開かれ、先月30日から開かれていた全国5都市での開催日程を終えた。意見発表した市民からは、「家庭教育を重視してほしい」とする意見が目立った。「愛国心」や「公共」については賛否が分かれた。

 秋田市では、「一般的な宗教教育を学校で行うべきだ」「学校制度の弾力的な運用を実現してほしい」とする意見が出された。

 東京、福岡市、福島県郡山市、京都市、秋田市の全国5会場では、文部科学省に意見発表の希望を寄せた市民305人のうち、46人が発表した。最も希望者が多かったのは、福岡の92人。文部科学省は、賛否の比率に合わせて発表者を選んだとしている。

 東京と福岡会場では、法改正反対派が傍聴席で騒いで議事を妨害、退去させられる事態となった。鳥居会長は5会場での議論について、「反対意見は主として、『変える必要はない』というものと、『侵略戦争につながる』というものだったが、そういう意見が大多数とは思っていない」と述べた。

 中教審では、教育関係団体や有識者からのヒアリングを経て来月、審議を再開。文科相への最終答申に向けた審議に入る。


共同 2002/12/15

改正反対、大多数でない 公聴会終了し鳥居会長

 中央教育審議会(鳥居泰彦会長)は15日、教育基本法の全面改正を提言した中間報告に対する5回目の公聴会を秋田市内で開催した。中教審は一連の公聴会日程を終え、教育関係団体などからのヒアリングを数回開きながら、来春の答申提出を目指す。

 鳥居会長は公聴会終了後の記者会見で、改正の賛否で発表者の意見が分かれたことに対し「『改正の必要がない』『変えること自体が侵略戦争の再現になるのでは』という意見が大多数だったとは思わない」と述べ、反対論より新しい教育改革の方向性を求める声が強かったことを強調した。

 国民の多くが現行法の内容も知らないまま改正論議が進んでいることについては「ほとんどの国民は法律の条文を知らずに生活している。全国民が理解するには何十年も教育が必要だ」と反論、一定期間で周知を徹底すれば十分との考えを示した。


京都新聞 2002/12/14

 愛国心や家庭・地域連携で意見
 左京で「1日中教審」

 教育基本法の見直しについて11月に中間報告をまとめた中央教育審議会は14日、京都市左京区の国立京都国際会館で、「1日中教審(公聴会)」を開いた。中間報告で教育の基本理念に新たに盛り込むとした「郷土や国を愛する心」「家庭・地域の連携強化」などについて、教諭、保護者、宗教関係者ら10人が約300人の傍聴者を前に意見を述べた。

 1日中教審は11月末から全国5会場で開き、京都で4会場目。中教審の鳥居泰彦会長ら8委員が出席した。

 教育基本法改正について、京都市の小学校教諭牧野雅彦さん(44)は「不登校や学力問題、家庭の教育力の低下は、法そのものに原因があるのだろうか。現行法の理念を大切にし、教育振興基本計画を充実させることが必要」と訴えた。

 国を愛する心については、奈良県立高校育英会会長の川本克己さん(57)は「サッカーW杯の熱気に満ちた応援は愛国心の象徴でないか。私自身、愛国心の教育を受けてこなかったが、他の人に劣るとは思っていない」と法改正に消極的な意見を述べた。岐阜県の高校教諭野原清嗣さん(46)さんは「生徒は国旗や国歌について、正しく学ぶ機会を奪われてきた。私は自分で国旗や国歌の意味を調べて、授業で教えた」と体験を紹介した。

 一方、中間報告で先送りされた宗教教育に関しても言及があり、全日本仏教会の石上智康常務理事(66)は「日本の宗教に関する基本的知識と理解を教育上、重視する姿勢を法に盛り込むべきだ」との見解を述べた。

写真=教育基本法の見直しについて、さまざまな意見が出た「一日中教審」(京都市左京区・国立京都国際会館)


共同 2002/12/08

教育基本法改正に慎重論 福島で「1日中教審」

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 中央教育審議会(鳥居泰彦会長)の第3回地方公聴会「1日中教審」が8日、福島県郡山市で開かれ、中間報告で全面改正を提言した教育基本法改正について「幅広い意見を聴くべきだ」などの慎重論や、反対する意見が相次いだ。

 慎重な審議を求めたのは福島県の図書館司書、籠田まき子さん(34)。「基本法を直さないといけないなら(最終答申まで)1年などと期間を決めず、社会教育に携わる人や学校現場、中高生など、いろいろな人々とも議論すべきだ」と指摘した。

 山形県の中学教諭、金内甲司さん(42)は、改正に反対の立場から「愛国心や伝統・文化を教えれば、教育は何とかなると言うが、学校の威光は崩れている。それよりも部活動などから教員を解放し、学習指導などに力を入れられれば、不登校なども減る」と主張。愛国心などの教育では教育現場が抱える問題解決にはつながらないとの見方を示して、中間報告を批判した。


朝日 2002/12/07

「国を愛する心」めぐり様々な意見 福岡で一日中教審

 教育基本法の改正をめぐる中央教育審議会(文部科学相の諮問機関、鳥居泰彦会長)の公聴会「一日中教審」が7日、福岡市で開かれ、西日本各地から選ばれた10人が意見を述べた。焦点は、11月の中間報告で導入すべき理念として打ち出された「国を愛する心」。しかし、審議会委員の側から、この問題に関する言及はなく、すれ違いの印象が強い公聴会だった。
 公聴会は全国5カ所で開かれることになっており、福岡は11月30日の東京会場に次いで2カ所目。鳥居会長ら6人の委員が参加した。

 意見発表をした10人のうち、教育基本法の見直しに反対・慎重の意見を表明したのは6人。福岡県の中学教諭川上忍さん(39)と大分県の小学教諭近藤直美さん(39)は、1クラスの生徒数の多さやいじめなどの問題を踏まえ、「教育基本法の理念が現場に生かされていない」と指摘した。

 台湾に生まれ、日本国籍を取得した福岡県のパート従業員箱田麗蓉さん(46)は「教育基本法に使われている平和、福祉、真理などの言葉は概念がはっきりしている。だが、『国を愛する心』は人によって受け止め方が違う。基本法にはなじまない」と述べた。

 岡山県の短大教員松井圭三さん(41)は、教育基本法の内容が一般に知られていない点を指摘し、「私も最近まで目を通したことがなかった。2、3年の周知期間を置いてから議論をしても遅くない」と述べた。

 一方、見直しに賛成との立場を表明した福岡県の高校教諭佐藤恵子さん(44)は「日本人のアイデンティティーの育成が最重要課題」と述べ、佐賀県の大学生多田隈誠志さん(23)は「共同体への帰属心は思想の押しつけでなく、しつけの範囲内のことだ」と主張した。

 発表の後、委員側から10人に対して、質疑応答が行われたが、「国を愛する心」に関する質問はなかった。

 会場では約300人が傍聴。発表者や委員の発言にヤジが飛ぶ場面もあり、席を立って「委員は自分の考えを明らかにしろ」と言い続けた男性が、場外に連れ出された。

(21:25)


朝日 2002/12/07

教育基本法改正に危ぐ 教育関連15学会共同シンポ

 日本教育学会や日本教育社会学会など教育学関連の15学会が7日、教育基本法見直しを提言した中央教育審議会の「中間報告」を検討する共同シンポジウムを東京都内で開いた。パネリストや参加者からは、法改正自体の必要性に対する疑問や、中教審が「公共心」などの理念を法に盛り込むべきと提言したことを問題視する意見など、批判的な発言が相次いだ。
 400人以上が参加。共同企画は戦後初めてという。パネリスト4人が「教育の専門家がかかわらない政治主導の改革論議が進み、基本法に関する長年の研究成果や議論の蓄積が軽視されている」「戦略的に憲法改正と一体で進められているため、法を改正するという結論が先行している」といった指摘をした。参加者からは「学者は象牙の塔に閉じこもらず、こうした現実の課題にもっとかかわっていくべきだ」といった意見も出た。


日本経済 2002/11/30

「1日中教審」で一般市民が意見表明

 教育基本法改正問題を巡り、文部科学相の諮問機関、中央教育審議会は30日、東京都内で「1日中教審(公聴会)」を開き、一般市民10人が意見を表明した。約350人が傍聴、改正への賛否のほか、多様な教育形態を求める意見も出た。

 文部科学省によると、意見発表には86人が応募。事前に書面で出した意見内容を基に、「国や郷土を愛する心」「公共」を盛った中間報告と法改正への賛否を振り分け、賛成6人、反対2人、その他の意見が2人の割合で意見を述べた。

 賛成の立場からは「愛国心がタブーの現状は不可解。自国を愛せる人は他国も尊重できる」(東京都の主婦、52)、「日本人の感性、美意識などの国民教育を考えないといけない。地べたに座り込む子どもは日本固有の恥の文化を理解していない」(静岡県の男性高校教員、40)などの発言があった。 (20:00)


読売 2002/11/30

教育基本法改正に国民の声を「一日中教審」開催

 教育基本法に「国や郷土を愛する心」などを盛り込む全面見直しを提言した中央教育審議会(鳥居泰彦会長)の中間報告に対し、国民の意見を聞く「一日中教審」が30日、東京・江東区の東京ビッグサイトで開かれた。

 応募者から選ばれた主婦や教師ら10人が意見発表を行い、「愛国心をタブー視するのは不可解」(東京・主婦)、「宗教を教育の一つとして取り上げるべき」(神奈川・男性医師)、「PTAが校長を選ぶ米国のような柔軟な教育を」(栃木・女性塾講師)など、改正に肯定的な意見が続いた。

 明確な反対は「教育は教員や子どもに任せて、公権力は介入すべきでない」(神奈川・男性教員)など2人。このため、「反対派の発表が少ない」などと男性が騒ぎ、警察に退出させられる一幕もあった。

 文部科学省によると、陳述希望の意見書を寄せたのは86人。6割が改正に賛成、2割が反対、その他が2割で、同じ比率で発表者を選んだという。

 「一日中教審」は今月中旬まで、秋田、福島、京都、福岡市で開かれる。(読売新聞)
[11月30日20時38分更新]


毎日 2002/11/30

<中教審>教育基本法見直しで「一日公聴会」10人が意見発表

 教育基本法の見直しについて、国民から意見を聞く公聴会「一日中央教育審議会」が30日、東京都内で開かれた。

 中教審が、11月14日に見直しを求める中間報告をまとめたことを受けての開催で、応募した86人から選ばれた10人が意見発表した。会場では350人が傍聴したが、途中で議事をさえぎる発言をした傍聴者が、警察に連れ出されるなど混乱もあった。

 神奈川県に住む都立高校教諭(55)は「基本法は変えるべきでない。現行の基本法の精神を実現すべきだ」と批判。東京都内の主婦(52)は「核家族化や女性の社会進出で、日本の伝統的な家庭像が失われた。基本法に家庭教育をしっかり位置付けるべきで、改正すべきだ」と主張した。静岡県の高校教諭(40)も「今の子供たちには、日本人としての文化や伝統を理解する心が欠けている。茶髪の生徒には『黒髪は日本の文化・伝統だ』と教えないといけない」と賛成意見を述べた。

 10人のうち、6人が賛成意見を述べ、2人が反対し、2人は「多様な教育を認める方向で議論を」などと持論を述べた。会場には、中教審委員も7人出席し、意見発表者と質疑を交わした。

 「一日中教審」は、12月中旬までに福岡市や福島市、京都市、秋田市でも開かれる。 【澤圭一郎】(毎日新聞)


毎日・佐賀版 2002/11/25

佐賀ニュース - 11月25日(月)20時50分

[肥前つれづれ]国って何? /佐賀

 国ってなんだろう。最近ずーっと考えている。

 というのも、教育の憲法とも言うべき「教育基本法」を見直し、その中に「愛国心」の理念を盛り込もうという動きがあるからだ。

 文部科学相の諮問機関「中央教育審議会」が遠山敦子大臣に提出した教育基本法の改正を求める中間報告によると、今の基本法は「新時代を切り拓(ひら)く日本人」を育成する理念や原則が不十分だという。そのために、基本理念として公共心や道徳心、郷土や国を愛する心を盛り込むよう求めたという。

 確かに公共心や道徳心がなくなってきているのは否めないが、生まれた郷土や母国を愛さない人はいないだろう。この6月に日本中を沸かせたサッカーのワールドカップ大会にしろ、オリンピックなど国際競技大会を見ていても、がむしゃらに日本を応援するのは愛国心からだろう。何も今になって「愛国心」という理念を教育基本法に盛り込まなければならない必要性も見あたらないのだが。

 ここで問題になってくるのが「国」という概念だろう。郷土、日本の領土、領海、領空などと考えを広げていく一方で、今のような頼りにならない政治、腐敗しきった官僚機構というところまで国という範囲は広がっていく。

 このような腐敗した官僚制度や、スキャンダル国会にも象徴されたような日本の政治、政治家を愛しなさいといわれても、これは大いに困る。いまの政治不信は選挙の投票率が如実に物語っている通りだ。

 こういう政治しかみせてくれないから、中間報告が指摘するように「若者たちは夢や希望を持ちにくく、社会の構成員としての責任意識の欠如が目立つ」ようになるのではないだろうか。

 教育基本法の改正まで持ち出し、「愛国心」がないからだというのは突飛(とっぴ)過ぎる。これまで重ねてきた文部行政の失敗のツケを「基本法に問題があるから」とそこに答えを求めるのは本末転倒だろう。

 要は不信が募るばかりの今の政治や教育現場の荒廃、家庭での問題といった、もっと身近なところに目を注ぐことが大事なのではないだろうか。子供が悪いことをしても叱りきれない親や教師の増加。若者たちに夢を語れない大人たち。これでは社会のルールなど理解できず公共心、道徳心も萎(な)え、夢なんて……持ちようもなかろう。

 教育基本法の改正問題。国の考えが大いに気にかかる。<佐賀支局長・陣内毅>(毎日新聞)


各紙社説
Editorials


朝日 2003/03/23

■教育基本法――改正論議は不毛だ


 文部科学省の中央教育審議会が教育基本法を改正するよう答申した。

 ルールを守る気持ちや道徳心、自律心が低下している。いじめや不登校、中途退学、学級崩壊の問題も依然として深刻だ。勉強しようという意欲も落ちている。

 答申は子どもの現状をそう嘆いた。多くの人たちの考えも大差はないだろう。いまの教育に色々な問題があり、早急に手を打たなければならないことは間違いない。

 だからといって、教育基本法を改正しなければならない、といきなり結論づけてしまうのは飛躍がありすぎる。

 基本法は教育の理念をうたっているものだ。理念をいじっても、いじめや学力低下への処方箋(せん)にはならない。基本法を変えれば解決できるほど、問題は簡単ではない。

 学校や家庭で悩んでいる教師や父母にとって、基本法を改正するかどうかの論議は遠い世界のことではないだろうか。

 今回の答申も現行法の理念を否定しているわけではない。現行法に加え、「公共への参画」や「伝統・文化の尊重」「郷土や国を愛する心」を入れたいというのだ。

 確かに、「公共」や「伝統」「愛国心」という言葉は基本法にはない。

 しかし、答申も認めているように、同じような理念はすでに盛り込まれている。

 教育基本法は、国家のためが主眼だった戦前の教育を反省して、つくられた。しかし、単純に個人の尊厳をうたっているわけではない。

 一人ひとりの人格の完成をめざす。同時に、国家と社会の形成者としての国民を育成する。そういう目的を掲げて、個人と国家の関係に目配りをしているのだ。

 真理と正義を愛する。勤労と責任を重んじる。文化の創造と発展に貢献する。現行法はこうしたことも求めている。

 これ以上、あえて法律に書き込む必要があるのだろうか。理念がことさらに強調されれば、学校が窮屈になる恐れもある。

 哲学者の梅原猛氏は、いまの教育基本法について、世界に通用する理念だと評価している。そのうえで、現実を法律に近づける努力がされてこなかったと指摘する。

 梅原氏は中学校で話した内容を著書「道徳」にまとめた。「国のリーダーが悪いことばかりしている国を愛せよと言ったって無理です。国が立派になれば、自然に国を愛する心が出てくる」と述べている。

 答申は法改正とは別に「今日の教育が個人の明日をつくり、社会の未来をつくる」といい、教育への投資を惜しまず施策を果断に実行する必要がある、と提言した。

 こちらの方こそ、いま切実に求められていることだろう。少人数学級できめ細かく教える。画一的な施策をやめて学校の創意工夫を生かす。そうしたことを着実に広げていく必要がある。

 遠山文科相は基本法改正よりも、足が地についた改革を進めていくべきだ。


毎日 2003/03/23

教育基本法 改正は喫緊の課題ではない

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 教育基本法の見直しを求める中央教育審議会の答申が20日公表された。現行の教育基本法を貫く「人格の完成」「平和的な国家及び社会の形成者」などの理念は、憲法の精神に則(のっと)った普遍的なものとして継承。心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から、新たな理念や原則を明確にするために基本法を改正することが必要、という内容だ。

 答申は、付け加えるべき新たな理念・原則として(1)信頼される学校教育の確立(2)「公共」に主体的に参画する意識や態度の涵養(かんよう)(3)日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心と国際社会の一員としての意識の涵養(4)教育振興基本計画の策定――などを挙げる。

 現行基本法の理念が間違っているから改正する、という論理をとらなかったことは重要だ。しかしこのことは逆に、基本法改正の理由を薄弱なものにしている。

 教育現場は、「学力」低下、いじめ、不登校など深刻な危機に直面しているが、基本法に特定の規定があるために、あるいはないために起きているわけではない。新たに加える理念もそれぞれ大事なことだが、基本法に明記しなければできないことはない。すでに取り組まれているものも多い。

 そもそも徳目は、法律に書けば実現するという性格のものではない。基本計画の策定にしても、基本法に盛り込まなければ不可能というわけではない。答申は、中間報告同様なお説得力に欠け、改正の積極的意義は、認め難い。

 考えなければならないのは、基本法の歴史的意味だ。基本法は、憲法とともに戦前の理念との決別を宣言する意味合いを持ち、戦後教育の背骨となってきた。改正論は早くからあり、政治的な思惑もからんで激しい対立が続いてきた経緯がある。基本法改正は、極めてセンシティブな問題なのだ。

 伝統的改正論は、「基本法は蒸留水のようで日本固有の味がしない」(中曽根康弘元首相)など理念自体に問題があるとの認識だ。教育改革国民会議の報告以来レールを敷いてきたのは、教育勅語の評価をいう森喜朗前首相であり、自民党内には「現行法を修正するくらいではどうにもならない」と全面改正を求める声が強い。

 仮に全面改正なら一からの議論になるが、排外主義に陥りかねない復古的内向き志向が大方の理解を得られるとは思えない。答申もそうした考え方は採らず、「国を愛する心や伝統・文化の尊重が国家至上主義的考え方や全体主義的なものになってはならない」との表現をあえて残した。伝統的改正論とは、相当距離がある。

 文部科学省は改正法案作りを進め、今国会に提案したい意向だ。しかし改正論にも濃淡があり、与党内にも慎重論が聞かれるなど議論は煮詰まっていない。ここは十分に時間をかけるべきだろう。

 教育荒廃の今、基本法改正のみに血道をあげることは、政治に引き回され、結果的に問題を拡散し隠ぺいする恐れがある。改正が喫緊の課題とは言えない。優先的に取り組むべきことは多々ある。


中国新聞 2003/03/22

教育基本法改正 答申を議論の一歩に

 中央教育審議会の鳥居泰彦会長が「二十一世紀の教育が目指す基本的方向を示したと確信する」と述べ、遠山敦子文部科学相も「これまでで最も重い答申だ」と評価したという。

 待ってほしい。その内容の煮詰め具合と審議経過を見ると、本当に歴史的な答申にふさわしいのか、疑問を抱かざるを得ない。法案化には与党間でさえ異論がある。日本の教育を左右する教育基本法の改正だから、ことを急ぐべきではない。

 基本法はその理念や原則を定める教育の憲法だ。戦前の国家至上主義的な教育を反省して「個人の尊厳」や「真理と平和の希求」を掲げている。その基本理念は間違っているわけではないから、それを転換するには強い抵抗感があっておかしくない。

 ただ、その理念で教育が進められた結果、日本を覆う閉そく感やいじめ、不登校などの問題が放置できない段階になったのも事実。自民党は改正を主張し、森喜朗前首相の私的諮問機関、教育改革国民会議が見直しを提言していた。教育改革をテコにした日本復活の期待も分からぬではない。

 答申では基本法は全面改正となるが、新たに社会に参画する公共心、道徳心、伝統文化の尊重、愛国心、男女共同参画社会への寄与など八項目の理念が挙がった。いずれも市民生活を営む上で大切である。

 問題は、理念の導入が現行法を改定するに足る説得力を待つか、最終的には国民が受け入れられるまでに内容が練り上げられているか、ではないだろうか。答申はそれが中途半端、不十分だと言わざるを得ない。たとえば「日本人の育成」や「日本のために」「新しい公共の担い手に」といった理念が強調されているが、「日本人の自覚」一つとっても教育を取り巻く問題とどう結び付くのか、十分な説明がない。

 答申は一人ひとりの個性を伸ばすことの重要性を強調しているが、国家や公共への貢献と個性の発揮がどう調和するのか。さらには「真の国際化」という課題にも答えていない。難しい問題は避けたのが真相だろう。

 議論の分かれる愛国心は「無難に通すために国を愛する心と書きなおした」(中嶋嶺雄委員)。個人の内心の自由を妨げる恐れがあるだけに、基本法に規定するには慎重でありたい。

 審議も答申の重さとは裏腹に低調だった。中心になった基本問題部会は約三十回の部会のうち、五回は過半数に足りず、昨年九月以降、一回も出席しない委員もいたそうだ。

 「最も重い答申」どころか、中途半端、説得力に乏しいと言うべきだ。世論は改正に賛否相半ば。そこで文科省と中教審に求めたい。今回の答申は国民的議論のたたき台とし、理念上も論理的にも説得力を持った教育基本法改正の答申の「本編」をまとめてほしい。国民も広く議論を起こそう。


鹿児島新報 2003/03/22

正論異論(22日付)

 「愛国心」って何だろう
    図書編集者 中島 栄一

 教育基本法の見直しを検討してきた中央教育審議会(鳥居泰彦会長)の最終答申が、今月20日の総会で確定し、その日のうちに文部科学省の遠山大臣に提出されました。当初案通り「郷土や国を愛する心」も教育基本法にきっちり盛り込まれました。早ければ、統一地方選挙明けの通常国会に政府案として上程される運びになるでしょう。

 そうなると、先生方は否応なしに「愛国心」教育と正面から向き合うことになります。現に、というより、すでに福岡県では中教審答申の先取りと思われる教育が実施されています。新聞報道によると、福岡市立小学校52校と柳川市立小学校の4校では、昨年の4月段階で児童の通知表に「国を愛する心情」を3段階で評価することが義務づけられていて、先生方はその対応に苦慮しているようです。

 そもそも「国を愛する心」という言葉自体が、いかようにも解釈できる抽象概念ですから、先生方の戸惑いは当然でしょう。字義通り解釈すると「国を愛する」ということは「国の良し悪しや、国家の性格・体制の如何に関わりなく国を愛しなさい」ということになります。「国が汚職にまみれようと、公約違反を重ねようと、核武装を画策しようと、戦争に加担しようと、国を愛しなさい。国の言うことを聞きなさい」ということになりかねません。児童生徒から「イラクや北朝鮮のような国でも愛さないといけないのですか」「戦前の帝国憲法下のような日本でも国の言うことは聞かないといけませんか」と質問されたら、教師はどう答えればいいのでしょうか。

 無限定無条件に「国を愛する心」を鼓吹する教育ほど危険なものはありません。戦前の軍国主義教育がその何よりの証左ですが、マスコミで日々報道される北朝鮮の国のありようもまた、その恐ろしさと危険性を私たち日本国民に突き付けているように思います。

 自民党政調会長麻生太郎氏は、教育基本法には「国」の概念がないから「愛国心」を明記せよと主張していますが、認識不足も甚だしいと言わなければなりません。教育基本法の前文には「民主的で文化的な国家を建設して」云々の文言が明示されているし、第1条(教育の目的)にも「平和的な国家及び社会の形成者として」真理と正義を愛する国民の育成が謳われています。

 国の概念の有無というよりも、麻生氏と教育基本法とでは国の捉え方が違うのでしょう。麻生氏は国民を国の下に置き「国家統治の対象」とみなしているフシがありますが、教育基本法では国民を「国家の形成者」「国の主権者」とみなしています。国民は「国の主人公」、「国の担い手」ですから、むやみやたらに国を愛したり、国やお上の言う通りに動いたりはしません。国が悪事を働けばノーを突きつけ、改まらない場合は政府の退陣を迫るでしょう。

 そういう気概「国の主権者としての意識」が、今ほど大事な時はありません。正しい意味の「愛国心」があるとすれば、それは「平和で民主的な国を担う心」というものです。日本国憲法と教育基本法には、その精神がきっちり盛り込まれています。基本法改正論者には別の意図があるとしか思えません。


読売 2003/03/22

[教育基本法]「答申生かし改正案の提出を急げ」

 ようやく土台ができた。だが問題はこれからだ。

 文部科学省の中央教育審議会が、教育基本法改正に向けた答申をまとめた。首相の私的諮問機関、教育改革国民会議が二〇〇〇年に出した提言を、具体化した。

 新たに法に規定する理念として、「公共の精神」や「国を愛する心」の涵養(かんよう)、伝統の尊重などを盛り込んだ。

 いずれも、これまで欠けていた理念である。その点では前進だ。答申を生かして基本法を改正し、戦後教育のゆがみを是正せねばならない。

 現行の基本法は、作成過程でGHQ(連合国軍総司令部)の干渉を受け、日本側原案にあった「伝統を尊重し」や「宗教的情操の涵養」が、削除されたり書き換えられたりした。

 それが、戦後教育を「個」の偏重に陥らせ、「公」の精神をないがしろにさせることにつながった。国とのかかわりも軽視された。

 今、学校に、北朝鮮による日本人拉致事件を授業で扱うことをためらう空気がある。国の存在意義について考えざるを得ないテーマだからだ。国家をタブー視する姿勢は健全な教育とはほど遠い。

 こうした点も含め、現行法が戦後教育に及ぼした影響などについて、中教審が本来なすべき論議を十分にしてきたとは言い難い。「宗教的情操教育」についても合意形成ができなかった。

 基本法改正には、「全体主義につながる」との批判もある。民主主義が保証されていない国における愛国心の強調は危険だが、日本の民主主義は十分成熟している。イデオロギー重視の立場からの批判としか、言いようがない。

 国民会議発足に当たり、当時の小渕首相は、英文学者の池田潔氏がイギリスのパブリックスクールの留学体験を記した「自由と規律」の新書判を、関係者に配った。規律の中で自由な精神がはぐくまれていく様が、描かれている。

 自分を律することを知って初めて、自由を使いこなせる人間となる。そのための教育が必要だ。三年前の論議の出発点を思い起こさねばならない。

 幅広い宗教団体で構成する日本宗教連盟が、「宗教を文化として教える」ことを求めるなど、新たな動きもある。

 答申を受け、与党が改正案の協議に入るが、公明党は慎重な姿勢を崩していない。支持母体の創価学会に、改正へのアレルギーが強いためだ。与党三党は直ちに改正案を国会に提出することは避け、協議を続ける。

 不十分な面を改めるよう論議を尽くし早急に改正案を提出すべきである。


産経 2003/03/22

主張 大筋で評価できる答申だ

【教育基本法改正】
 中央教育審議会は教育基本法改正に向けた最終答申をまとめた。昨年十一月の中間報告に比べ、方向性がさらに明確になった。大筋で評価したい内容である。

 「宗教的情操の涵養(かんよう)」について、中間報告は賛否両論を併記するにとどめていたが、答申は「大変重要」としたうえで、道徳の授業などで一層の充実を図ることを求めた。また、現行の教育基本法にある「宗教に関する寛容の態度」に加え、「知識、宗教の持つ意義」を尊重することも重要だとした。宗教的情操教育の必要性がかなり明確になったといえる。

 「宗教的情操の涵養」は現行法の制定過程(昭和二十一−二十二年)で日本側原案にあったが、国家神道の復活を恐れるGHQ(連合国軍総司令部)によって削除された文言である。このため、学校現場では、現行法の特定の宗教教育を禁じた九条の規定をことさらに拡大解釈する風潮が生まれ、給食前の合掌や座禅研修などの伝統的な指導方法が次々と排除されていった。こうした行き過ぎが是正されるような法改正を望みたい。

 教育への「不当な支配の排除」を定めた現行法十条についても、国と地方自治体の責務を明確化するという法改正の方向性が答申で示されたことは、大きな前進である。これまでは、一部の教育現場で、「国は教育に介入できない」「国の学習指導要領に法的拘束力はない」といった一方的な解釈がまかり通り、逆に、過激な教師集団による“不当な支配”を招いてきた。法改正により、こうした意図的な曲解は早急に改められなければならない。

 中間報告と同様、答申でも、「国を愛する心」や「伝統文化の尊重」が強調されている。現行法にはない重要な国民教育の理念であり、これらが盛り込まれたことは、改めて高く評価しなければなるまい。現行法でおろそかに扱われてきた「家庭教育」について、新たに規定を設けるべきだとする提言も、多くの国民から支持されよう。

 「男女共同参画」など一部に論議が不徹底な部分もあるが、全体として、現行法の欠陥や問題点にかなり踏み込み、戦後教育のゆがみを正そうという姿勢がうかがえる。今後、与党間協議や法案づくりに焦点が移る。国民世論の一層の盛り上がりを期待したい。


河北新報 2003/03/21

教育基本法改正/機が熟したとは思えない

 中央教育審議会が教育基本法の全面改正を求める答申をまとめた。文部科学省は今国会への改正法案提出を目指している。
 「教育の憲法」をすべて書き直す必要性が、今どれほど高まっているだろうか。答申に表れた審議会の問題意識が幅広く共有されるためには、まだまだ時間が要る。機が熟したとは、とても思えない。
 審議の過程で、現状へのさまざまな嘆きが吐露された。共感を覚えることも多かった。問題は、法条文の書き換えによって現状是正の効果が期待できるかどうかである。

 新たな理念をじっくり語り合い、その成果を新法に結実させるためには、関心の広がりが何よりも欠かせないはずだ。それも不十分だ。
 基本法を教典のようにみなして一字一句いじるなと言いたいのではない。しかし、全面改正の歩みを早めるべき理由も全く見いだせない。
 いじめ、不登校に学級崩壊。それに学習意欲の低下。加えて少年犯罪。これらの現象を挙げた上で、答申は「わが国の教育は危機的な状況に直面している」と指摘する。

 現状の受け止め方には、違和感はない。しかし、これらの問題点が現行法のどんな不備によってもたらされたか。言い換えれば、基本法の改正によって問題が解消されるかについては、さらに検証が必要だ。
 答申は五つの育成目標を掲げた。「自己実現を目指す自立した人間」「豊かな心と健やかな体を備えた人間」「知の世紀をリードする創造性に富んだ人間」。この三つは異論の差し挟みようがない。

 ほかの二つはどうか。「21世紀の国家・社会の形成に主体的に参画する日本人」「日本の伝統・文化を基盤として国際社会を生きる日本人」。育成すべき普遍的な人間像を、なぜ日本人と呼び直さなければならないか。
 論議を深めていく上で、答申の中のキーワードとして着目したいのは「『公共』の精神」である。

 「社会の形成に主体的に参画する『公共』の精神、道徳心、自律心」。答申が強調するこの部分と、「郷土や国を愛する心」とは、どんなふうに重なり合い、違うとすればどこが違うか。そこをもっと考えたい。
 関心が広がっていかないのは、改正の是非を論じ合うことが理念論争の様相を帯びてしまうからだ。「愛国心」か「国を愛する心」かが焦点になるようでは、議論を見守る意欲は長続きしない。

 中教審への諮問はおととし11月。当初の予定ではわずか1年で答申する段取りだった。「愛国心」を「国を愛する心」と言い直すようなことになったのは、改正を急ごうとしたからだろう。
 諮問が、森喜朗前首相の私的諮問機関による報告に基づいて行われたことも無関係ではないと思う。森内閣の意欲を、切実な課題として受け止め続けてほしいというのは、もう無理な話だ。
 解決を図るための具体的な手だて。その財源。前のめりの理念論争を避けて、論じ合うべき事はたくさんある。


産経 2003/03/05

主張 行き過ぎ是正を評価する

教育基本法改正
 教育基本法改正に向けた中央教育審議会の答申の素案が示された。男女共同参画社会の理念について、行き過ぎに歯止めがかかる方向で修正が加えられるなど、さらにバランスのとれた内容になりつつある。

 昨年十一月に発表された中間報告では、男女共同参画について「まだ十分に実現されていない」「教育・学習のあらゆる場で、その実現や男女平等の促進に寄与する新しい視点が必要」と書かれていた。だが、日本の教育の現状はむしろ、男らしさや女らしさまで否定するジェンダーフリー教育が浸透し、行き過ぎが問題になっている。中間報告のままでは、これを加速しかねない恐れがあった。

 その後、各地で開かれた公聴会で、こうした懸念を指摘する声が上がり、三月末の答申に向けた素案で、このくだりが削除されたようである。国民の声をきちんと受け止めた対応を評価したい。ただし、現行法にある「男女が互いに敬重し、協力し合う」という理念は新法にも盛り込まれる見通しだ。それは当然だろう。男女共同参画や男女平等の理念は大切である。問題は、それをはき違えた教育なのである。

 焦点の「宗教的情操教育」については、条文化は見送られたものの、その重要性を指摘したうえで、国の教育振興基本計画の中で専門家を交えて具体的な方法を検討していく方向性が示された。憲法の政教分離規定との絡みがあり、いきなり条文化すれば、教育現場に混乱が生じかねない、との配慮からだ。可否について両論併記にとどまっていた中間報告に比べ、一定の前進といえよう。

 素案が示された三日の中教審基本問題部会では、「郷土や国を愛する心」「日本の伝統文化の尊重」など、現行法にない重要な教育理念が新法に盛り込まれることには、ほとんど異論がなかった。ただ、中間報告にあった「国家至上主義的考え方や全体主義的なものになってはならない」という文言には、一部委員から「時代錯誤の表現で、必要ない」という意見が出された。傾聴に値する意見である。

 答申まで残り一カ月足らずとなったが、日本に生まれた子供たちが国に誇りをもてるような教育の根本法規を目指し、さらに議論を深めてほしい。


産経 2003/01/04

主張 「戦後」の歪みを正そう
【教育基本法改正】
尊敬される日本人育成を

 制定から半世紀以上が経過した教育基本法の改正の方向がようやく見えてきた。昨年十一月、文部科学省の中央教育審議会は「国を愛する心」や「伝統文化の尊重」などを求めた中間報告を発表した。現行法にない重要な教育理念が盛り込まれている。答申に向け、さらに議論を重ね、子供たちが日本に誇りをもてる教育の道しるべとなる根本法規に仕上げてほしい。

 占領下の昭和二十二(一九四七)年三月に制定された現行の教育基本法は「人格の完成」「個人の尊厳」など、世界共通の教育理念をうたっている。しかし、肝心な日本人としてのありようや規範についての規定が欠落していることは、これまで、しばしば指摘されてきた通りである。

≪曲解された「不当支配」≫

 普遍的とされる現行規定についても、欠陥が露呈している。例えば、第一〇条の「教育は不当な支配に服してはならない」とする規定は、一部に「国は教育に介入できない」「国の学習指導要領に法的拘束力はない」などという一方的な解釈を生み、逆に、過激な教師集団などによる“不当な支配”を招いた。第五条の「男女共学」も、占領軍の指示でやみくもに進められた感が強く、良き校風まで失ってしまった学校が多い。

 改正法案に新たに盛り込まれようとしている「国を愛する心」は、子供たちが尊敬される日本人として国際社会で生きていくために欠かせないものである。日本の国旗・国歌を尊重し、外国の国旗・国歌にも敬意を払う態度や、日本の歴史と文化を愛し、外国の歴史にも理解を示すバランスのとれた国家意識の育成にもつながる。

 家庭教育についても、新たな規定が設けられる見通しだが、踏み込んだ議論が少し足りないようだ。中間報告は「これからの教育には、学校・家庭・地域社会の連携が必要」としている。それはその通りだが、それだけではないだろう。家庭の教育力の低下は、戦後教育が個人主義を強調しすぎたあまり、社会の最小単位である家族の価値を軽視してきた結果でもある。家族愛や家族の絆(きずな)の大切さが分かるような形にしてもらいたい。

 中間報告には、「性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会を実現することが重要な課題」というくだりがある。誰も反対できない文言だが、このままでは、男らしさ、女らしさまで否定する過激なジェンダーフリー教育を加速しかねない。

 新しい教育基本法を考えるうえで、拉致事件から学ぶものも多い。

≪拉致事件に学ぶべきだ≫

 年末開かれたシンポジウムで、北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの父、滋さんは「拉致事件を通じて、国家のあり方、愛国心、家族のあり方を教えてほしい」と訴えた。母、早紀江さんは「めぐみが帰ってきたら、いなくなった夜(昭和五十二年十一月十五日)につくっていたホワイトシチューを食べさせてあげたい」と話した。北朝鮮から二十四年ぶりに帰国した蓮池薫さんの兄、透さんは「弟は故郷(新潟県柏崎市)に帰って昔の光景に接し、日本は自分たちを見捨てていなかったんだと深く心に刻んだ」と語った。

 これが「家族愛」「郷土愛」「国を愛する心」というものだろう。中教審の委員も参考にすべきである。

 戦後、歴代文相は何度か、教育基本法の欠陥を補おうと腐心してきた。昭和二十六年、天野貞祐文相は失効した教育勅語に代わるものとして、国民実践要領を示した。三十一年、清瀬一郎文相は「教育基本法には、国への忠誠と家族の恩愛の情が欠けている」と批判した。三十五年、荒木万寿夫文相は「良き日本人づくりが欠けている」として、中教審に「期待される人間像」の検討を指示し、その答申が四十一年に出された。いずれも、健全な家族観や国家観を取り戻そうというねらいだったが、教育界や言論界から反発を受け、成功しなかった。

 今回の中教審での見直し論議は、森喜朗前首相の私的諮問機関、教育改革国民会議の要請を受けたものである。四月までに答申をまとめ、それに基づく改正法案が六月までの通常国会に提出される予定だ。今度こそ、実りある成果を期待したい。


河北新報 2002/12/30

公と私/問い続けるべき課題として

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 国家あるいは社会という「公」と、個人、家族という「私」の関係を、自分の中でどう位置付けるか。
 そう問い掛けてくる出来事の多い一年だった。そして、幾つもの課題が年を越す。
 サッカーのワールドカップ(W杯)で味わった熱い気持ちと、中央教育審議会が言う「郷土や国を愛する心」は、どう違うだろうか。
 会社の不祥事の内部告発を思い立った人は、愛社精神と社会的利益の境界線をどう踏み越えたのだろうか。自分にもできるだろうか。
 日本人拉致事件被害者5人の帰国は、何にもまして、国家と個人、家族の関係について考えさせられた。

 大きなニュースだけではない。例えば、自分の部屋と他人のいる空間との壁が見えなくなったかのような若者らの振る舞い。ありふれた光景の中にも、公私の関係付けという問いが、答えを探しあぐねたまま根を下ろしている。
 ケータイという個の道具に頼りながら、親しい者とは頻繁に親しさを確かめ合わないではいられない。W杯で示された若者たちの高揚は、「自分らしさ」と「つながり」を共に追い求めたがる日々の行動に通じてもいる。
 11月の中教審中間報告には「しかし、そんな『つながり』だけでは…」という思いが反映されている。

 憲法に準じる教育基本法の改正を急ぐべきだとの結論には同意できないが、「国民の間では自信の喪失とモラル低下の悪循環が生じ、規範意識を低下させている」といった現状認識は共有できる。
 「互恵の精神に基づき課題解決に貢献しようという新しい『公共』の創造への参画」。報告が強調するこんな視点は、旧来の滅私奉公とは全く違った、個を十分生かした上での「活私創公」の提言と読み取れるだろう。
 拉致被害者の曽我ひとみさんは「人々の心、山、川、谷、みんな温かく美しく見えます」と帰郷の感想をつづった。しかし、その心境と、「故郷や国を愛する心」は、真っすぐにはつながらない。

 親を思う気持ちと、親の世代の価値観をどう考えるかは別なように、古里を拡大した空間がそのまま国家になるわけではない。「故郷や国を愛する心」が、公権力によってはぐくまれるべきものだとも思えない。
 国家暴力によって人生をねじ曲げられた拉致被害者5人の言葉は、しばしば家族の重みを語り掛けてきた。

 加害者の国で強いられた生活を支えたものは、やはり家族だった。というよりもむしろ、その原形である夫婦のきずなだった。国家、社会と一線を画すための、よりどころとしての家族、夫婦。そんなことを考えさせた。
 その加害国は1人の指導者が極大まで肥大し、個人と国家を等価とみなすようになった独裁国である。個人崇拝が行き着く先を示している。
 公と私の関係を問う心の構えを保ちたいと思う。安直に答えを求めるよりも、一人ひとりが折々に自分に問い続ける。不断の自問こそが大事なのだと考えたい。

2002年12月30日月曜日


北海道新聞 2002/11/16

教育基本法*前文の審議なぜしない(11月16日)
 果たして十分な論議がなされたのか、疑問がわく。
 中央教育審議会が、教育基本法の全面見直しを求める中間報告をまとめた。

 文部科学相の諮問を受けてからわずか一年である。十月後半からは集中的な審議で報告にこぎ着けたが、欠席者も多く、委員の間からも議論不足の声が漏れるありさまだ。

 教育基本法は憲法と密接な関係にあり、制定から五十五年にわたって教育の理念を支えてきた。

 その「教育の憲法」をなぜいま、見直す必要があるのか。誰もが納得できる説明が、当然なければならない。しかし、中間報告をつぶさに読んでも、明確な答えは見えてこない。

 最初にスケジュールありきで、拙速な審議をしては、将来に禍根を残す。そのことをしっかりと肝に銘じてもらいたい。

 現行の基本法は前文と十一条からなり、教育の目的や機会均等、義務教育や社会教育などについて簡明に目標を掲げている。

 中間報告は、各条文に沿って改定したり付け加えるべき項目を列挙した。

 だが、前文については「法全体の見直しの考え方が決まった後で、あらためて検討」と先送りしてしまった。

 前文は、基本法の根幹である。もし全面見直しをするのであれば、真っ先に手がけるのが順序であろう。

 現行の前文が目指す教育の理想にどのような不都合があるのか。それをきちんと論証したうえでの各論でなければ、接ぎ木細工のような改定になるのではないか。

 憲法と教育基本法を貫く理念は、言うまでもなく平和主義と民主主義である。

 中間報告は、新たな理念として国を愛する心や公共心を盛り込んでいる。伝統を大切にしたり、郷土や国を愛することは、もとより自然な感情だ。

 しかし、それを教育の理念として明文化した時、現行法の「個人の尊厳」がないがしろにされかねない。

 愛国心や伝統の尊重を基本法に書き込むのは、保守勢力の懸案となってきた。基本法の見直しが憲法改正の露払いになったり、教育への国家介入につながりかねないことに危ぐを覚える。

 すでに福岡市の小学校では、通知表の社会科で「国を愛する心情」を評価の項目に入れ、論議を呼んでいる。

 学校での日の丸・君が代の強制は一段と進む。国民の心の領域を侵すようなことがあってはならない。

 中教審は今後、全国五カ所で公聴会を開き、来春にも答申をまとめるという。文部科学省や自民党は来年の通常国会に、基本法の改正案を提出する構えだ。

 国家百年の大計を、目先の政治日程に合わされてはたまらない。広範で腰を据えた国民的議論が必要である。


東奥日報 2002/11/16

見切り発車の中教審報告

 「新しい時代を切り開く心豊かで、たくましい日本人の育成のため」として、中央教育審議会は教育基本法の全面改正を求める中間報告を公表した。

 報告は、伝統・文化を尊重する心や愛国心を養うことで、日本人としてのアイデンティティー(同一性)を確立し、公共の規範を守る態度を養うことが大切だと指摘している。

 さらに、家庭や地域の役割と責任を新たに盛り込むよう求めている。だが、現行法の理念や原則のどこが不十分で、どんな不都合が生じるのか具体的な説明はない。

 憲法の理念実現を目標に掲げ、個人の重視を根本として戦後の民主的な教育を支えた教育基本法の一体どこに問題があるのか。中間報告からは何も伝わってこない。

 それどころか報告は、国を愛する心や公共心をアピールし「国家の構成員として有為な国民」を育てる教育の重要性をことさら強調している。

 これでは、軍国主義を支えた戦前の教育からの脱却を目指し、「教育は国のためではなく一人ひとりの人間のためにある」としてきた戦後の教育を、事実上否定することになると思われる。

 しかも、審議期間はわずか一年で、十分な議論が行われたとは言えない。正面からの議論も不十分なまま、「初めに見直しありき」でまとめられた印象が強い。

 中教審は来春にも最終答申をまとめ、政府は来年の通常国会に同法の改正案を提出したいとしているが、いったん明文化されてしまえば、教育への国家統制が強まることは目に見えている。

 もっと多くの教育関係者らから意見を聞くなど、論議を尽くすよう求めたい。

 現行の基本法は、歴代の保守勢力から批判され続けてきた。「基本法は、個人や普遍的人類が強調されすぎ、国家や伝統、文化、家庭の尊重などが抜け落ちている」という批判である。

 基本法の制定直後から改正を求める声が出ていたが、二年前教育改革国民会議が当時の森首相の主導で「新時代にふさわしい教育基本法の見直し」を提言。これを受けて遠山文科相が昨年十一月、中教審に見直しを諮問した。

 基本法は、国の教育の土台とも言える。それを、わずか一年だけの審議で全面改正を求める中間報告を出した。中教審の委員の任期が来年一月で切れるのに合わせた「スピード審議」である。見切り発車と言わざるを得ない。

 はじめから政治的な意図に基づく審議であり、内容も教育改革国民会議の提言を踏襲している。

 なぜ見直しの必要があるのか、論議の積み上げがないから新味も説得力もない。

 例えば中間報告では「伝統や文化の尊重が不十分であり、その視点が明示されていない」という。だが、基本法の前文では「普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない」とある。

 現行法のどこが、伝統や文化を尊重していないというのか理解に苦しむ。

 さらに、看過できないのは「ひ弱で将来の夢を描けず規範意識が低下した子ども」や「子どもには教員の指導に従って規律を守り、学習に取り組む責務がある」などのきつい表現もある。子どもを敵視したようなこんな文言が、国の教育の大本である基本法の中に盛り込まれていいものか。教育への国家統制が危ぐされる。

 家庭や地域の責任、愛国心などについても、「自覚が大切」などと一つの型を決めつけ、法律で強制できるようなものではない。

 個人の内面にまで踏み込むのは明らかに行き過ぎである。政治的な思惑よりも、教育現場の声に耳を傾けた真剣な論議を望みたい。


河北新報 2002/11/16

教育基本法/中教審の意図が分からない

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 中央教育審議会(鳥居泰彦会長)は慌ただしい審議日程を組んで、教育基本法の抜本的な見直しを求める中間報告を遠山敦子文部科学相に提出した。だが今、教育基本法を抜本的に改めなければならない理由が理解できない。

 見直しの理由は「新しい時代を切り開く心豊かでたくましい日本人の育成のため」という。
 「国民の間では自信の喪失とモラル低下の悪循環を生じ、子どもはひ弱になり、規範意識や学ぶ意欲を低下させている」「青少年の凶悪犯罪の増加が懸念され、いじめ、不登校、学級崩壊など深刻な危機に直面している」など、教育の現状認識については中教審の見解に同感する。
 問題は、なぜそうした危機状況が生まれたか、である。
 中間報告では、「公共」の精神、道徳心、自律心が欠け、郷土や国を愛するという日本人としてのアイデンティティーがはぐくまれていないからだ、とする。

 教育基本法をもう一度、じっくりと読み直してほしい。「勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成」を目指していたはずだ。
 基本法が掲げる「教育の目的」「教育の方針」および前文の精神が、どのように現在の教育の荒廃と結びついているのか、説明不足というほかない。
 十分な議論もなく、「教育基本法の抜本的見直し」という結論に向かって進むのでは、新しい時代を切り開く人づくりの理念に対する国民的な支持を欠いてしまう。

 憲法と同じく、教育基本法も“不磨の大典”ではない。時代の変化とともに教育の理念も変わり、新しい時代にふさわしい教育基本法が必要になるときがくるかもしれない。必要があれば、当然、改めるべきだ。
 教育の荒廃をもたらしたものは、もっと別のところにある。金、カネ、金の金権腐敗体質、勝てばよしとする優勝劣敗の風潮、自分さえよければよいとの自己本位主義など、今の社会を覆う価値観が学校に、家庭に、地域に、激流のように押し寄せているためではないか。

 圧倒的に不利な状況の中で、義務教育現場をはじめ数多くの教諭たちが頑張り、より悲惨な状況へと落ち込むのを必死になって食い止めているのが今の姿だと認識する。
 戦前教育の精神的支柱となった教育勅語が発布されたのは1890年、第1回帝国議会の開会1カ月前のことである。それから敗戦までおよそ55年だった。教育基本法が施行されたのは1947年で、今回の中教審の中間報告まで55年を数える。

 憲法と教育基本法を基礎に戦後教育が始まったが、実は戦後教育改革の実質的な寿命は極めて短かった。
 朝鮮戦争を契機に、戦後改革の見直しが行われ、いわゆる「戦後教育」の実験はまったく実を結ぶ時間的余裕もなく、次々と否定されていったのである。
 教育の荒廃を救う道は理念いじりではなく、もっと現実的な次元で取り組むべきだ。


信濃毎日 2002/11/16

社説=教育基本法 丁寧な論議が見えない

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 教育基本法改正を提言した中央教育審議会の中間報告は、論議を尽くせぬまま先を急いだ印象をぬぐえない。歴史の転換点の重みをはらむにもかかわらず、国民的盛り上がりを欠いているのは問題である。

 遠山文科相の諮問から一年、例えば人々のお茶飲み話に中教審がどれほど取り上げられただろうか。

 学校の悩みや困り事は日常的としても、基本法について、ましてその改正論議となると、ごく限られた範囲の、一部の関心事でしかない。

 基本法は、国家への忠誠を求めた戦前の反省に立ち、戦後教育の骨格を成すはずのものだった。憲法に準ずる法律と位置付けられる。

 それを変えようとするからには、国民各層を広く巻き込む議論の掘り下げが前提だ。中教審の基本問題部会はヤマ場の先月、定足数に満たない中で開催を余儀なくされている。

 委員の任期切れを前に駆け込むかのごとくまとめた中間報告は、審議の密度を問われても仕方ない。

 社会的関心の高まりは今なお、見えにくい。国民と響き合う関係をつくれていない点について、中教審は何より反省すべきではないか。

 中間報告は「新しい時代を切り開く心豊かでたくましい日本人」の育成を掲げている。

 現行法の「個人の尊厳」「真理と平和」といった理念を大切と考えつつも、深刻な教育の危機に対応するには不足していると述べる。

 それが▽郷土や国を愛する心▽公共の規範の再構築▽家庭の役割や責任の規定―などである。

 個々に言わんとする趣旨は理解できないでもない。確かに青少年の凶悪犯罪や自己中心的な行為、いじめや不登校など、憂慮される現実の広がりは無視し得ないものがある。

 問題は、現行法がそれらに対応できず、迅速な措置の妨げになっているのか。基本法を改めれば、方途が見つかるのか―である。

 そうではないと考える。実情に応じた取り組みは、これまでも、さまざま重ねられてきた。大事なことは学校や行政機関を中心に、本質を把握し、連携を強める姿勢である。

 “愛国心”一つを取っても法で規定してどうこうする性質のテーマではない。本来、自然な感情がわき出てこそである。中間報告の向こうに、個人の内面へ国家が統制を強める懸念が消えない。

 中教審は論議不十分を露呈した。最終報告へと歩を進める前に、自らの論議の中身を見直すべきである。


神戸新聞 2002/11/15

教育基本法/負の改正なら納得できぬ

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 中央教育審議会(鳥居泰彦会長)が十四日、教育基本法の見直しについて中間報告を遠山敦子文部科学相に提出した。

 「二十一世紀を開くたくましい日本人を育成するため、基本法を抜本的に見直す」として、同法の全面改正を求めている。

 教育基本法は、憲法の理念を象徴的に投影した数少ない法律である。いわば、戦後の日本人のあるべき理想の姿を条文の中や教育現場に求めようとしたものだ。

 その全面見直しは、日本人像を変えるということになる。理想像は当然、時代で変わるし、同時に不変の部分もある。が、中間報告は、いかにも改正を急ごうとする政治的思惑が先行している感が否めない。

 中間報告から改正理由を読み取ると、大まかに、以下のポイントがあげられる。

 (1)国民の自信喪失、モラル低下と、そうした状況下で続発する少年犯罪や、学級崩壊など教育危機の克服(2)個人の尊厳を重んじるあまりに起きた「公意識」の欠如に対する修正(3)現条文にはない愛国、愛郷心、伝統文化を尊重する心の涵(かん)養(よう)(4)グローバル化、国際競争時代など社会変化への積極対応―などである。おおむね、先の教育改革国民会議の内容を踏襲したものだ。

 愛国心や公意識などは議論の余地はあるが、他項目についての中教審の認識は、ある程度、納得できるものであろう。

 しかし、考えてみると、このような理由を前面に打ち出し、教育基本法を改正しなければならない緊急性、合理性が、果たしてあるのだろうかという疑問もわく。

 モラル低下は、まず大人社会から問われなければならない。

 学級崩壊などの混乱は基本法のせいだけだろうか。教育行政、あるいは政治の責任という側面もあるのではないか。少年の凶悪犯罪は深刻ではあるが、欧米先進国の中では極めて少ないのが現状だ。

 グローバル化への対応は、もっと多角的な課題であるし、基本法を変えなくとも、大学刷新など国際競争力強化を目指す教育改革は進んでいる。

 文化や郷土への関心も、急速に高まっている状況を、見過ごしてはならない。

 改正と同時に「教育振興基本計画」の検討に入るが、こうした現状を踏まえたうえで、いま一度、深い論議を求めたい。

 憲法とリンクする教育基本法の改正を、そのまま憲法改正に結びつけようとする思惑も指摘されている。だから「はじめに改正ありき」といわれるのだが、もしそうであるなら「負の改正」といわざるを得ず、多くの国民を納得させるものではない。


山陽新聞 2002/11/17

◇教育基本法 初めに改正ありきは困る

 文部科学相の諮問機関である中央教育審議会(鳥居泰彦会長)が「新しい時代を切り開く心豊かでたくましい日本人の育成のために、教育基本法の抜本的な見直しが必要」とする中間報告を提出した。

 現行の教育基本法は「個人の尊厳」「人格の完成」を重視し戦後教育のバックボーンとなってきた。「国家のため」が主眼だった戦前の理念との決別宣言であったことは言うまでもない。

 その基本法を見直すのであれば作業は慎重に、報告書も説得力あるものでなければならない。そういう意味では審議は未消化、見直しの必要性の根拠についても判然としないと言わざるを得ない。

 中間報告は教育の現状について「子どもはひ弱になり、規範意識や学ぶ意欲を低下させている。青少年の凶悪犯罪の増加が懸念され、いじめ、不登校、学級崩壊など深刻な危機に直面している」と分析している。

 学校教育の混迷ぶりは、だれの目にも明らかだ。しかし報告書はここで一気に「わが国が立ちいかなくなるという危機感を持って教育を根本から見直していかなければならない」と導く。悩める子どもたちに言及するのではなく、いきなり“わが国”を持ち出す感覚をどう理解すればよいのだろうか。

 中間報告はまた、現行法の普遍的な理念は今後も大切にするとしながら、新たに大学改革の推進、家庭の教育力の回復のほか「公共に関する国民共通の規範の再構築」などを盛り込み「見直しを行う必要がある」としている。

 「公共」には日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心、国際性の視点を含む、とする。しかし、あまりにも愛国心、公共心を強調するのは危険である。現行の「個人の尊重」が骨抜きにされてしまう。愛国心を基本法で規定してしまうと将来、時の権力者に乱用される恐れがないとはいえまい。

 審議が不十分だったことも問題だ。先月後半、論議がヤマ場に向かっていたとき、多忙から一度も審議に加わらなかった委員が約半数の七人もいたという。

 中教審は来春にも最終答申をまとめる予定だ。成案に向けては、基本法に何があるために、あるいは何が欠けているために、いじめ、不登校、学級崩壊、学力低下などが起きているのかとの現状を踏まえた議論を行い、国民に理解できる答申にしてほしい。

 教育基本法は憲法に準ずる重さを持っている。「初めに改正ありき」の手抜き審議では後々、あまりにも失うものが多くなる。


中国新聞 2002/11/16

教育基本法 欠かせぬ国民的議論

 教育基本法の在り方を審議している中央教育審議会は「抜本的な見直しが必要」との中間報告を提出した。二十一世紀を担う子どもたちの教育理念や教育方針がどう変わるのか、教育関係者や保護者の関心は高い。だが、中教審の委員からさえも不満が出たように、報告提出に向けてあまりにも取りまとめを急ぎ過ぎた感がする。「なぜ今、全面改正か」を含め、来春の最終答申までに国民的論議を深めたい。

 報告は「二十一世紀を切り開く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す」とし、基本理念として「公共心」や「愛国心」を養うことの重要性や、「家庭の責任」を指摘している。

 確かに、モラルの低下をはじめ、青少年の凶悪犯罪の増加、いじめ・不登校・学級崩壊という荒廃した教育現場の現状をみれば、「教育をどうにかしなければ」という危機感は強い。中教審が「公共」の精神をはぐくむため、社会の一員として使命や役割を自覚する必要性を強調したのはもっともだ。郷土や国を愛する心や国際性を尊重するのもうなずける。

 しかし、新たな理念を言葉として基本法に盛り込めば教育現場がよくなるものでもない。そもそも「愛国心」は自然の感情として芽生えてくるはものだろう。定義するのになじまず、時の権力者の意向によって都合のいいように解釈される恐れもある。報告で「国家至上主義的な考え方や全体主義的なものになってはいけない」とわざわざ記したのも、そうした危険性をはらんでいるためだ。「憲法改正や有事法制制定への地ならしだ」と危ぐする声も無視できない。

 教育の担い手として中教審が指摘した「家庭や地域社会、教員の役割」の必要性については、今春から学校完全週五日制の導入で既に各地でさまざまな取り組みが現場で先行しており、あえて盛り込む必要があるのかどうか。「家庭の責任」を基本法に盛り込むことで、国が家庭教育に干渉したり、教育責任を家庭に押し付けたりする懸念も募る。

 報告で「子どもはひ弱になり、規範意識や学ぶ意識が低下」「教育を受ける際は、真摯(しんし)に学習に取り組む責務がある」としている。教育が荒れたのは子どものせいだと言わんばかりの表現には違和感を覚える。子どもたちの学ぶ意欲を低下させた責任は一体、どこにあるのか。中間報告では施行から五十五年経過した現基本法に対する検証がないため、全面改正するには説得力に乏しい。

 国は今回の中間報告を受けて、広く国民から意見を募集している。個人の尊厳の重視を根本として戦後教育を支えてきた教育基本法は全文十一条で、決して長文ではない。中間報告と合わせて目を通し、子どもたちの将来、日本の将来を考えていきたい。



琉球新報 2002/11/16

中教審報告・説得力ない基本法見直し
「百年の大計」もてあそぶな


 中央教育審議会(中教審)が、「新しい時代を切り開く心豊かでたくましい日本人の育成のためには教育基本法の抜本的な見直しが必要」とする中間報告をまとめ遠山敦子文部科学相に提出した。来春には最終答申をまとめ、来年の通常国会に提出する予定だ。

 今、教育現場は病んでいる。中間報告が指摘するように「子どもはひ弱になり、規範意識や学ぶ意欲を低下させている。青少年の凶悪犯罪の増加が懸念され、いじめ、不登校、学級崩壊など深刻な危機に直面している」という現実は、多くの国民が認識を一致できるものと思う。

 そして「危機感を持って教育を根本から見直していかなければならない」との意識も共有する。

 だが、そのために教育基本法の抜本的な見直しを必要とする結論は、あまりに乱暴すぎる。中間報告を念入りに読んでも、その根拠は希薄だ。ひ弱な子ども、学習意欲の低下、いじめ、不登校、学級崩壊…。これらの原因が、教育基本法にあるとするならば、もっと丁寧な説明が必要なはずだが、この部分は省略して一気に見直しへと走っている。


「深刻な危機」理解不足


 中間報告は、問題は指摘しながらも、その文面から悩みや叫び声が全く聞こえてこない。教育のうわべをさすっただけで、ひたすら「危機感」を叫んでいる感がする。そうならば、「深刻な危機」を抱えている現場で、真剣に問題と対峙(たいじ)し、解決へと取り組んでいる人たちに対して無礼ともいえる中間報告だ。

 そう受け止められても仕方のない審議過程だ。十月後半の二週間で部会二回、総会一回という足早な審議。部会は二回も定足数に届かず、七人の委員は一度も報告審議に加わらなかったという。さらに、「見直しを行うべきであるとの結論に至った」との素案に、委員の一人から「いつ、どこで、誰が決めたのか」とかみつかれるに至っては、もはや審議の体をなすものではない。

 そんな事情だから、中間報告は疑問に答えないまま、ひたすら結論へと走り出す。現行の教育基本法を「個人の尊厳」「真理と平和」などの理念を評価しながらも、なお「日本人を育成する観点」からの理念や原則が不十分だと指摘する。

 その不十分なものとして挙げたのが「家庭の教育力の回復、学校・家庭・地域社会の連携・協力」「『公共』に関する国民共通の規範の再構築」などだ。これをなぜ基本法に規定しないとならないのか、具体的に説明はしていない。

 国家が土足で家庭にまで入ろうとしているのに説明には手を抜く。現実に家庭で子どもの教育に問題を抱え、それを乗り越えようと、涙を流したり、髪振り乱して叫んだり、時には死さえも意識しながら、必死の日々を送っている人たちが、どう納得できるのだろうか。報告は「深刻な危機」の現実を理解していない。国ができることは、家族で余裕のある時間をつくるため、社会のシステムを変えることぐらいではないか。


政治の影が見え隠れ


 「公共」も「主体的に参画する意識や態度の涵養(かんよう)」を求める。また「郷土や国を愛する心を持つことが重要」とも訴える。何を意図しているのだろう。「主体的に参画」する以前に、人間として最初に取る行動は考え、判断することだ。個人の判断の過程を省略しての参画を求めようというのだろうか。そうならば、戦前への回帰だ。

 「国を愛する心」を求めるのも何かしらの意図を感じる。郷土を知り、国を知り、そこに誇りを感じるなら、愛国心は自然に育つはずだ。おのずと生じる情念まで、基本法でなぜ規定する必要があるのだろうか。

 教育基本法は、戦前の教育への強い反省から生まれた。戦前の理念への決別を込めた基本法だ。それを今、中教審は揺さぶろうとしている。

 そもそも今回の中間報告は、純粋な教育論からスタートしたのだろうか。神の国発言の森喜朗前首相主導でレールが敷かれたものだ。制定直後からの「日本国への忠誠心がない」という批判の声を受けたものだ。こうした政治の影を引きずった報告であることは歴然としている。

 初めに見直しありき、だ。教育を政治が引っ張った。百年の大計という教育を、議論らしい議論もせずに、もてあそんだにすぎない。

 来春予定する最終報告は不要だ。一から審議をやり直して、新たな方策を見いだすべきだ。教育が病んでいることは事実だが、基本法に要因があるものではない。基本法が目指すところから、教育の現実が遠い場所に立っている要因を議論し直すべきだ。親や教師、そして子どもたち、さらに地域の苦しみを共有することから始まる。もちろん、純粋な教育論での審議が前提だ。


朝日 2002/11/15

■教育基本法――理念もてあそぶ暇はない

 「21世紀を切り拓(ひら)く心豊かでたくましい日本人を育てる」。それが新たな教育の目標だ、と中央教育審議会が中間報告をまとめた。

 その目標の実現のため教育基本法を改正しなければならない、というのである。

 報告は、基本法にある「個人の尊厳」や「人格の完成」の理念はこれからも大切だが、新たな理念や原則として、大学改革の推進や家庭の教育力の回復のほか、「公共」に関する規範の再構築などを盛り込むよう求めた。公共に関する規範には、伝統や文化の尊重、郷土や国を愛する心、国際性の視点も含まれる。

 基本法に盛り込もうとする項目は、ひとつひとつをみれば、うなずけるものがほとんどだ。生まれ育った土地の伝統や文化を大切にするのはだれにも異論はあるまい。郷土や国を愛するのも自然な心だろう。

 まず問題は、新しい理念を基本法に加えることで、子どもたちを取り巻く深刻な状況を好転させられるかどうかである。

 私たちはこれまで、文章をいじるより、法律の目的を実現する具体的な方策を探るのが先決だ、と主張してきた。

 今回まとまった報告を読んでも、その考えは変わらない。陰湿ないじめや学級崩壊、勉強をする意欲の低下、あるいは他人を思いやる心のないことなど、解決すべき問題は山ほどあるのに、今回の報告が決め手になるとは思えない。

 現行の基本法は、責任や勤労、正義、文化を重んじる姿勢を明確にしている。それらがきちんと実現されていれば、教育がこんなに荒廃することはなかったのだ。審議では過去の教育行政の検証や反省、分析は十分ではなかった。

 理念だけの話なら改正しても害はないという意見もあるかもしれない。だが、報告は国家至上主義的になってはならないとしつつも、「日本人」や「心」が強調されていることが気になる。ほかの理念に比べて均衡を欠くほど突出すれば、行きすぎになりかねない。

 すでに心配される動きも出ている。

 福岡市内の小学校では、通知表に「国を愛する心情、世界の中の日本人の自覚」について評価する項目を設けているところがかなりある。自然にわき起こるべき故郷や国を愛する心を成績としてチェックすれば、いい成績を取りたい子どもは教師の指導に従うだろう。しかし、それで故郷や国を愛する心が本当に育つだろうか。

 文部科学省の主導で報告はこのまま答申に変わり、改正基本法案づくりに進みかねない。それはやがて指導要領の改訂や、これまで以上の教育現場への徹底となる。理念は理念にとどまらず、場合によってはゆがみを生ずることもある。

 教育の現状を打開するのに、有効な処方箋(せん)とはいえない。理念をもてあそんではいけない。


中日/東京 2002/11/15

改正は広い議論から

 文部科学省の中央教育審議会がまとめた教育基本法改正の中間報告は「新しい時代にふさわしい」内容といえるだろうか。教育の現状を含め、広く国民の間で報告の中身を議論してほしい。

教育基本法

 現行の教育基本法が一九四七年に制定されてから半世紀以上たって、教育を取り巻く社会、経済状況は大きく変わっている。

 中教審の中間報告がいうように、少子・高齢化、知識社会化、生涯学習の需要増大、地球規模の大競争への突入などに教育はどう対応すべきか。将来の日本の姿を見通しながら考えるのは、有益に違いない。

 教育をめぐる状況は明るくない。学級崩壊、いじめ、「普通の子」の突発的暴力、学力や体力の低下など問題が山積している。より深刻なのは、親や地域の教育力の衰えだ。

 では教育基本法改正が具体化したのは、新しい時代に対応しよう、という純粋な気持ちだけからか。

 中間報告がいう「新しい時代にふさわしい」教育には「国を愛する心」が含まれている。中間報告素案にあった愛国心という言葉は、中間報告から消された。「国家至上主義的考え方や全体主義的なものになってはならない」というくだりも削られている。二つを考え合わせると、同じ意味でも聞こえのよい言葉を使って改正への抵抗感を薄めつつ、国家至上主義や全体主義を明文では否定したくないという後ろ向きの意図が、全くなかったのかどうか。

 憲法改正の前哨戦として、まず憲法と密接な関係のある教育基本法から変えたいという政治的思惑が、このあたりに影を落としているのかもしれない。国民は十分に中間報告を読み込んで、考えてほしい。

 新しい時代を追い求めるのなら、その前に自立心や責任感の欠如など中間報告の指摘する「心の危機」の生まれた原因の究明が必要だ。

 自主、自律、自己責任を自覚した個人がなかなか育たないのは、組織偏重、横並び主義、年功序列といった古い価値観が依然として幅を利かせているからだ。

 現行基本法が掲げた個人の尊重さえいまだに定着していないのに、法律いじりで新しい教育が生まれるかどうか。ここは、基本法改正の中で検討されている「教育振興基本計画」づくりを切り離して早急に法律化し、教育・研究予算の充実、質の高い教員の確保などを計画的に進めたい。

 小泉純一郎首相が言う「米百俵」の精神で、長引く不況に負けず、教育立国に向けて国民の合意を形成すべき時期はいまだ。


毎日 2002/11/15

教育基本法 中教審報告こそ見直しを

 中央教育審議会の中間報告は、教育基本法について、「見直しを行うべきであるとの意見が大勢を占めた」と集約した。

 しかし議論は未消化のままで、説得力に欠ける。何より問題なのはなぜ見直しが必要なのかが、依然はっきりしないことだ。

 教育基本法は、憲法とともに戦後教育の背骨となってきた。教育の理念を「法律」で定める例は世界でも少ないが、基本法には戦前の理念との決別を宣言する意味合いがあった。それを変えるのであれば、それなりの理由が要る。

 中間報告は、「子供はひ弱になり、将来の夢や目標を描けぬまま規範意識や学習意欲を低下させ、教育現場は、いじめ、不登校、学級崩壊など深刻な危機に直面している」と分析。「教育の在り方を根本にさかのぼって見直さなければならない」と述べる。

 その通りだが、この現状認識は教育改革の必要性には結びつくにしても、基本法改正の理由にはならない。教育の荒廃が、基本法に特定の規定があるために、あるいはないために起きているとの論証がないからだ。

 中間報告は基本法について「個人の尊厳」「真理と平和」「人格の完成」など憲法の精神にのっとった普遍的理念は大切にしつつ、「重要な教育の理念がなお不十分」だから見直しが必要とする。

 そして不十分なものとして「家庭の教育力の回復」「『公共』に関する国民共通の規範の再構築」「日本人のアイデンティティ―(伝統、文化の尊重、郷土や国を愛する心)の視点、国際性の視点」などを掲げる。

 しかし、基本法に規定がなければできないことは何もない。多くは随分前から取り組まれている。この1年の議論は広がりも深まりもしなかった。各委員の言いっぱなしに終わった印象が否めない。熱意に欠けた。

 なぜ改正なのか。自民党の麻生太郎政調会長は先日、「基本法には日本というものが抜け落ちている」と述べた。「日本国に対する忠誠心がどこにもない」(56年、清瀬一郎文相)など、制定直後から出ている改正論の眼目はその点にある。憲法改正を求める声と重なる論理であり、憲法、基本法が排除した理念の再評価を目指す、政治的、イデオロギー的な狙いが透けて見える。教育の現実から出てきた議論ではない。

 結局中教審も、古色蒼然(そうぜん)たる「初めに改正ありき」の政治的な思惑を引きずった。中間報告は当初「見直しを行うべきだとの結論に至った」との表現だったが、異論が出て「大勢を占めた」になった。生煮えのまま無理やり見直しの道筋を描いたように思われる。

 審議の過程で委員から、「政治が教育を作るのではなく、よき教育がよき政治を作る。古代ギリシャはここをはき違えて滅びた」という哲学者、故田中美知太郎氏の言葉の紹介があった。基本法は、教育の視点で考える問題であって政治が作るべきではない。「よき教育」のために取り組むべきことは、たくさんある。


日本経済 2002/11/16

「日本再生」へ向けた教育基本法見直し

 中央教育審議会が「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」と題する中間報告をまとめた。戦後制定された基本法をおよそ半世紀ぶりに見直し、グローバル化や社会規範の揺らぎなど、日本が直面する新たな課題を踏まえて「国家戦略としての教育改革」を進める指針を示した。

 連合軍占領下で制定された現行法は個人の尊厳や平和を基調にして教育の理念をうたっている。その見直しを巡ってしばしば国会や教育現場の政治的な争点とされてきたが、教育改革国民会議の提言などを受けて同審議会は「21世紀にふさわしい国のかたち」を構築する諸改革のなかに教育を位置付