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第154回国会 参議院法務委員会議事録第2号 2002/03/19 (抄)

(斜字・ハイパーリンクは引用者)

uploaded 2002/12/14


154回-参-法務委員会-02号 2002/03/19

平成十四年三月十九日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         高野 博師君
    理 事
                市川 一朗君
                服部三男雄君
                千葉 景子君
                日笠 勝之君
                井上 哲士君
    委 員
                青木 幹雄君
                岩井 國臣君
                柏村 武昭君
                佐々木知子君
                陣内 孝雄君
                中川 義雄君
                三浦 一水君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                角田 義一君
                浜四津敏子君
                平野 貞夫君
                福島 瑞穂君
   国務大臣
       法務大臣     森山 眞弓君
   副大臣
       法務副大臣    横内 正明君
       外務副大臣    植竹 繁雄君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  下村 博文君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務総局人事局長   金築 誠志君
   事務局側
       常任委員会専門員        加藤 一宇君
   政府参考人
       司法制度改革推進本部事務局長  山崎  潮君
       警察庁長官官房長        石川 重明君
       警察庁長官官房国際部長     村上 徳光君
       警察庁生活安全局長       黒澤 正和君
       警察庁刑事局長  吉村 博人君
       警察庁警備局長  漆間  巌君
       防衛庁長官官房審議官      横山 文博君
       法務省民事局長  房村 精一君
       法務省刑事局長  古田 佑紀君
       法務省矯正局長  鶴田 六郎君
       法務省保護局長  横田 尤孝君
       法務省人権擁護局長       吉戒 修一君
       法務省入国管理局長       中尾  巧君
       外務省中東アフリカ局長     安藤 裕康君
       外務省中東アフリカ局アフリカ
       審議官      小田野展丈君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○法務及び司法行政等に関する調査
 (法務行政の基本方針に関する件)


(中略)

○浜四津敏子君 公明党の浜四津でございます。
 まず、大臣所信で述べられました法務行政に関する当面の重要施策のうち、人権擁護についてお伺いいたします。
 フランスのストラスブールに本部を置く欧州評議会 Council of Europeという国際機関があります。これは欧州など四十三か国が参加する会議で、民主主義と人権の擁護機関として一九四七年に設立されたものでございます。特に、人権分野で欧州諸国の政策の牽引役を果たしてきた大変権威ある人権擁護機関でございます。日本も一九九六年にアメリカ、カナダ、メキシコとともにオブザーバー参加を認められております。政府としても、このオブザーバーとしての参加資格を日本の対欧州外交の重要な足場ととらえて参加してきたと理解しております。
 そこで、大臣にお伺いいたします。
 この欧州評議会へのオブザーバー参加資格付与は日本にとってどのような意味があり、この参加をどう評価しておられるのかをお伺いいたします。

○国務大臣(森山眞弓君) おっしゃるとおり、大変権威のある欧州評議会の、しかも人権に関する協議機関でございますので、非常に重要な場所だというふうに考えております。
 アメリカ、カナダに次いで日本もオブザーバー国となっておりますのは、これによって我が国が欧州評議会の閣僚委員会及びその下部組織へ原則として参加できるということになっておりまして、この評議会の様々な分野での活動について意見を述べる、あるいは意見を交換するという双方にとって意義のあるものだというふうに考えております。

○浜四津敏子君 この欧州評議会の支援の下、昨年六月にフランスで第一回死刑廃止世界会議 First World Congress Against the Death Penalty, Strasbourg - 21, 22 and 23 June 2001が開催されました。日本政府もオブザーバーとして参加いたしまして、死刑についての意見書を会議場で配付したと聞いております。その意見書は、要約しますと、死刑は国内問題であり、世論と国内犯罪状況によって判断されるべきであるという内容のものと伝えられております。
 ところで、この欧州会議参加国四十三か国はすべて死刑廃止が参加の条件となっておりますから、すべて死刑は廃止されております。また、国連加盟国百八十九か国のうち死刑廃止若しくは死刑凍結の国は百五か国に上っていると理解しております。いわゆる先進国の中で死刑を存置している国はアメリカと日本だけとなりました。アメリカでも既に十三州は廃止しております。
 この二〇〇一年六月の欧州評議会総会において、日本とアメリカに死刑廃止を求める報告書 Resolution 1253 (2001) Abolition of the death penalty in Council of Europe Observer states adopted by the Assembly on 25 June 2001 というものが提出され採択されました。その決議の内容の一部は次のようなものでございます。
 両オブザーバー国、すなわち日本とアメリカにおいて死刑廃止を妨げている様々な障害、例えば世論の高い支持などがあることを承知している。しかし、ヨーロッパ各国での経験が示しているように、こうした障害は乗り越えることができ、また乗り越えなければならないと。
 途中省略させていただきますが、よって、会議は、日本とアメリカに以下のことを要求する。一、遅滞なく死刑執行を停止し、死刑廃止に必要な段階的措置を取ること。二、死刑の順番待ち現象を緩和するという観点から、直ちに死刑囚監房の状況を改善すること。そして、それに加えまして、こう決議をいたしました。二〇〇三年一月一日までに著しい改善が見られない場合には、日本及びアメリカのオブザーバー資格を停止する、こういう旨の決議をいたしました。必ずしもすぐに死刑を廃止せよと言っているのではなくて、段階的措置をと、こう言っております。
 こうした前向きの措置は決して不可能ではないというふうに考えております。ともかく何らかの改善が見られなければ日本はオブザーバー参加資格を失う、こういう最後通告でございます。この最後通告に対して大臣はどのように対応されるのか、お伺いいたします。

○国務大臣(森山眞弓君) 昨年、欧州評議会の議員会議におきまして御指摘のような決議が採択されたことは聞いておりまして、承知しております。
 死刑制度の存廃の問題につきましては、基本的にはそれぞれの国におきまして、その国の国民感情とか犯罪の情勢とか刑事政策の在り方、文化的、社会的条件などを踏まえて慎重に検討し、独自に決定するべきものだと考えております。
 我が国におきましては、国民世論の動向や、凶悪重大犯罪が少なくならない、むしろ多発している状況を考えますと、刑事責任が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に死刑を科すことはやむを得ないというふうに私も考えております。死刑制度を廃止することは今適当ではないというふうに思っております。
 また、国民世論の動向、仮に死刑の執行が停止された後再開されたなどのようなことが起こりますと、かえって非人道的な結果になりかねないのではないかというふうにも思いますし、死刑の執行を停止することも適当ではないのではないかというふうに思うわけでございます。
 死刑制度との関連で欧州評議会での我が国のオブザーバー資格が問題とされるとすれば、それは双方にとって残念なことであるというふうに思います。
 今後とも、欧州評議会の様々な活動に協力し、友好関係を保ちながら、死刑制度をめぐる論議に関しては、我が国の実情、考え方について理解を得られるよう努力していきたいと考えております。

○浜四津敏子君 昨日、釧路地裁帯広支部で三児殺傷事件の被告人に対して死刑判決がありました。また、本日、宇都宮地裁におきまして宝石店放火殺人事件でやはり死刑判決がありました。
 また、先般、三月十四日には、広島高裁で一つの判決がなされました。それは、一九九九年、山口県光市で生後十一か月の乳児と若い母親が殺害されるという大変残虐非道な事件が起きたものでございます。この被告人は当時、犯行当時満十八歳と三十日、少年法に言う少年に当たりますけれども、少年法五十一条によりまして死刑判決を言い渡すこともできた事案でございました。一審の山口地裁では、裁判官は、様々な事情につき、熟慮に熟慮を重ねた結果、苦渋の決断として無期懲役を言い渡しました。そして、それに対して先日、三月十四日、二審の広島高裁も原審を支持いたしまして無期懲役を言い渡しました。何の落ち度もない妻と子を突然殺されたと。被害者の木村さん、法廷での意見陳述で、被告人に死刑判決が下り、反省し慟哭することを願っていると訴えました。
 私も、ある日突然、平和で平穏で幸せな家庭が何の理由もなく壊されていく、こういう結果の余りの深刻さ、また重大さ、そして犯行の悪質性、残虐性を見ますと、世論が死刑を望むのも一定の理解ができるところでございます。ましてや、被害者の方が極刑を望まれるのは当然といえば当然のことであるというふうにも思います。
 しかし一方で、本当に死刑で被害者感情はいやされるのかという問題もございます。あるこれは被害者の方、弟を殺された被害者の方の話を記事で読んだことがありますが、それによれば、被告人は死刑となった、しかし死刑で得られるものはなく、生きて謝罪と償いをさせたいと、こういう内容でございました。
 また、アメリカで七歳の娘を殺された母親、マリエッタ・イエーガーさんといいますが、来日の際に講演したものを読みました。そこにはこうありました。死刑というのは死刑を科そうと思っている人たちが望んでいるようなことをしてくれません。私が会ったことのある人たちの中に復讐を遂げる機会を得た人もいます。自分の愛する者の命を奪った人間が処刑されたのです。すべてが終わってみてその人たちが気付いたことは、自分たちが取り残され、うつろで満足を得られず、満たされていないということでした。死刑が行われればもたらされると希望していたことは起きなかったのです。死刑は心のいやし、そして新たな命をもたらしませんと、こういう話がありました。この問題についても、各国での様々な経験に学びながら真剣に考えなければいけないと思っております。
 ところで、法務省に一点お伺いいたしますが、現在の無期懲役刑の受刑者の平均服役期間はどのくらいになっておりますでしょうか。

○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。
 平成十二年中に仮釈放となりました無期懲役受刑者は七名おりますが、その平均服役期間は二十一年二月となっております。

○浜四津敏子君 一部まれなケースを除きますと、ほとんどが社会に再復帰しているということを示していると思います。
 先ほどの欧州評議会で議論されたことにも見られますように、死刑廃止というのは、現実に世界の潮流になってきておりますが、日本では国民的な議論は十分になされておりません。これにつきまして、本当に死刑が必要なのか、死刑で本当に被害者感情がいやされるのか、また死刑をなくすと凶悪な犯罪が増えるのか、死刑に犯罪抑止効果があるのか、こういった観点からの真剣な議論がなされなければいけないと思っております。
 法務大臣が署名される死刑執行命令書の原案は法務省の刑事局が作成すると伺っておりますが、その刑事局に配属されたある検察官の方の言葉を読んだことがあります。それは、自分たちは法律に従って手続を進めるだけである、国際的な死刑廃止の潮流は分かるけれども、決めるのは国会であると、こういうふうに述べたと伺っております。
 ともかく議論をし、そして検討し、何らかの改善を図りたいと私は希望をしております。改善の一方法として、死刑と無期との格差を埋める方策を提言させていただきたいと思っております。
 現在、死刑が必要だという人の中には、現行法上死刑に次ぐ重い刑罰である無期懲役では余りに軽過ぎる、その現状では死刑存置せざるを得ないという意見も多いわけでございます。現行の無期刑は、十年間服役すれば仮出獄できることになっております。仮出獄は、刑務所長の申請に基づきまして、地方更生保護委員会が改悛の情があるか否か、具体的には悔悟の情、あるいは更生の意欲、再犯のおそれ、及び社会の感情を総合的に判断して相当と認められるときに仮出獄を許すものとされております。仮出獄後は、保護観察に付せられますけれども、何事もなく無事に経過すれば生涯を社会で過ごすことができると、こういうことになっております。
 すなわち、現行の無期刑は、実質において、十年以上の有期懲役という結果となっておりまして、死刑に次ぐ重罪として本来あるべき無期刑とは実態は乖離していると言わざるを得ません。すなわち、現在の無期刑は、生命を存続させることを前提とする、また高い蓋然性を持って社会復帰があり得る刑でございます。これに対して死刑は、生命を絶つという内容の刑でございます。しかも、我が国では死刑の執行猶予や執行停止、あるいは恩赦を除きまして減刑ということもありませんので、社会復帰は始めから全く予定されていない刑でございます。したがって、死刑と現行の無期懲役というのは、本質的、決定的な差があるわけでございます。隣接した刑であるにもかかわらず、実質的には天と地ほどの乖離がある、ここに一番の問題があると思っております。
 しかも、死刑になる事案と無期懲役になる事案とでは、言わば紙一重のケースが多いというのが現状でございます。一審、二審あるいは上告審の間で、死刑判決、無期判決の判断が揺れ動くこともまれではございません。現場の裁判官の苦悩は多くの判決文からもにじみ出ております。
 例えば、先ほどお話しいたしました光市の母子殺人事件、これは一審、二審無期懲役でございました。また、いわゆるこの判決の中でもいかに裁判官が苦渋の決断をしたかという内容が出てまいります。また、いわゆる永山事件、これは十九歳の被告人が合計四人の命を奪うという事件でございましたが、原審は無期、最高裁で破棄差戻しとなって死刑となりました。また、甲府の信用金庫OL殺人事件でも、一審、二審無期懲役でございますが、この判決の中に、極刑も十分に考慮に値する、しかし熟慮の結果、無期を言い渡すと、こういう判決文が判決の中で述べられております。また、これは最高裁の平成十一年十一月二十九日判決でございますが、顔見知りの主婦宅を訪問して現金を強取し、強姦の上殺害する、こういう事件につきまして一審が死刑、二審が無期、最高裁が上告棄却となって無期、こういうことになりました。つまり、同じ事案につきまして死刑にしてもおかしくない、しかし無期懲役でも著しく正義に反するということはできない、こういう判決の内容でございました。
 最後に、これは二〇〇〇年の九月十八日、横浜地裁で言い渡された判決でございますが、るる死刑にするか無期にするかという考慮を重ねた結果、最後にこういう部分が判決に出てまいります。なお付言するに、同じ無期懲役刑に処せられる事犯にもその罪責の重さのほどには相当な幅が存するところ、本件は限りなく死刑に近い領域に属するものと言うべきである、また現在、死刑に代わる刑罰として、あるいはこれと併存させて仮出獄の認められない無期懲役刑の制度化が論議されているが、仮にその制度が実現したならば、本件の被告人に対してはその無期懲役刑に処するのが相当と思料されるという大変異例の判決が出されました。
 私どもも、このともかくも無期刑と死刑との間の天と地ほどもある乖離を何とか埋める施策として幾つか中間的な刑を検討してまいりました。それは、与党のプロジェクトチームでも検討したり、あるいは議連でも検討したりしておりましたが、例えば絶対的終身刑、仮出獄を認めない絶対的終身刑につきましては、またこれもある意味で問題がある。あるいは、裁判官が判決の際に仮出獄条件の最低服役期間を例えば二十年、三十年、四十年といったようにいずれかを言い渡す、こういう考えも提起されましたが、これは本来行政機関のなすべき仮出獄につきまして司法が介入するという問題点がある。
 あるいは、イギリスの終身タリフ制度に似たような終身刑制度はどうかというような議論もありましたけれども、これについても様々な問題点が指摘されたりしておりまして、私は個人としては、これは死刑と無期の間に新たな刑として特別無期刑というものを設けて、特別無期刑は二十年又は三十年以上服役しなければ仮出獄を認めない、こういう刑を刑法総則に規定した上で、死刑が規定されている条文に死刑との選択刑として規定してはどうかというふうに考えております。これは個人としての提言でございますので、大臣には御感想だけお伺いできればと思います。

○国務大臣(森山眞弓君) 死刑の問題については非常にいろいろな先生方が御心配をいただいて、研究していただいているということに心から敬意を表したいと思いますが、今の浜四津先生の大変具体的な御研究、そして御提案、傾聴に値するべきものだと思います。
 死刑と無期刑につきまして、現行の法制や運用に照らしましてその間に大きな格差があるのではないかという指摘が一般にありますことはよく承知しております。この問題につきましては、無期刑の在り方だけではなくて有期刑の在り方も関係してまいりますし、そのほかの各罰条の法定刑の定め方なども併せて検討するべき全体的な大きな問題になると思います。
 法務省におきましては、現在、我が国における刑罰体系全体の在り方に関しまして、諸外国の立法例や運用も参考にしながら調査研究を行っているところでございます。その中で無期刑を含む自由刑の在り方についても検討したいと考えております。

(後略)


参考

主張・国会で具体的な死刑論議を 早急な執行停止求める欧州評議会 (公明党ホームページ 2002/06/24)

死刑廃止へ国民的議論必要 浜四津代行 特別無期刑の導入を提案 司法人権セミナーで高野氏もあいさつ (公明党ホームページ 2002/05/29)


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